ワクチン接種後も「突破型感染」に警戒 重症化リスクは低下

【ニューヨーク=平田雄介】新型コロナウイルスのワクチン接種を終えたのに感染する「ブレークスルー(突破)型」の症例が米国で相次いでいる。重症化例は少なく、ワクチンは有効だ。ただ、感染力が強いインド由来の変異株(デルタ株)をうつす可能性は未接種の感染者と変わらないことも分かってきた。米疾病対策センター(CDC)は、感染の恐れの高い地域では接種の有無を問わず室内でマスクを着けるよう促している。

突破型の症例は今月、大リーグのニューヨーク・ヤンキースや東京五輪に出場予定の選手、ホワイトハウス職員らの感染が発覚したことで注目を集めた。CDCによると毎週3万5千人の感染が確認されている。

ほとんどが無症状か軽症で、19日までの入院・死亡は5914人。1億6100万人超の接種完了者に占める割合は0・004%未満にとどまり、重症化のリスクは低いとされる。

ワクチンの効果についてはイスラエルの保健省が22日、ファイザー製の感染予防効果が64%から39%に低下したと発表した。保健省は同時に、重症化予防の効果は91%と依然として高水準にあるとした。

米エモリー大のディーン博士(生物統計学)も入院・死亡のリスクは「接種を終えていない大人」で高いと指摘している。

一方、米メディアは29日、突破型の感染者がデルタ株をうつす可能性は未接種の感染者と変わらないとするCDCの内部報告書の内容を報じた。4日に東部マサチューセッツ州で起きた集団感染で、突破型感染者から採取した検体に含まれるデルタ株の量は、未接種の感染者とほぼ同じだったという。

報告書は「接種完了者が感染に気づかないままデルタ株を広げる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

ワクチンの効果を裏付けるデータは日本国内でも出ているが、接種後の感染リスクはゼロではない。東京都港区のみなと保健所によると、6月16日~7月21日に届け出があった陽性者1478人のうち接種後だった人は131人。うち1回目のみは111人、2回目を終えたのは20人だった。

会食などマスクを外す機会で感染する場合が多いといい、同保健所の担当者は「接種後もマスク着用や手指の消毒など基本的な感染予防を継続してほしい」と話している。

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