統合参謀本部議長、トランプ氏の暴走阻止に躍起…米名物記者の新著、政権末期の内幕検証

8月18日、ワシントン近郊の国防総省で記者会見する米軍のミリー統合参謀本部議長(AP)
8月18日、ワシントン近郊の国防総省で記者会見する米軍のミリー統合参謀本部議長(AP)

【ワシントン=黒瀬悦成】米紙ワシントン・ポストのボブ・ウッドワード、ロバート・コスタ両記者が昨年11月の米大統領選から今年1月の連邦議会議事堂襲撃事件に至る一連の混乱を子細に検証した著書「危難(Peril)」が今月21日に発売される。

米主要メディアが報じた著書の抜粋によると、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、トランプ大統領(当時)が大統領選の敗北を認めず周囲に怒鳴り散らすなど「深刻な精神的退化状態」に陥ったとして危機感を強め、トランプ氏が思いつきで中国などに戦争を仕掛けないよう対策を講じたとしている。

ミリー氏は、トランプ氏の支持勢力による議事堂襲撃事件が起きた2日後の1月8日、中国の李作成・中央軍事委員会連合参謀部参謀長に極秘裏に電話をかけ、米国が中国を攻撃することはないと確約した。

ミリー氏は同日、インド太平洋軍にも連絡し、中国が米軍の意図を誤解しないよう、近く予定していた軍事演習を延期するよう要請。さらに、米軍幹部らを集め、トランプ氏が仮に核攻撃命令を下した場合はミリー氏に知らせ、判断を仰ぐよう念を押した。

核攻撃命令は大統領だけが下す権限があり、ミリー氏の行動は越権行為にあたるが、トランプ氏の精神状態を受けて米軍幹部らも了解したとしている。

ミリー氏の懸念は政権高官の間で広く共有され、中央情報局(CIA)のハスペル長官はミリー氏に「右翼勢力によるクーデターが実行されつつある」と述べたという。

ウッドワード氏はニクソン大統領(当時)を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の報道で知られる。

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