加熱式たばこのヒットが牽引 イタリアから日本への輸入拡大

 
米フィリップ・モリスが販売する加熱式たばこ「アイコス」の本体と専用たばこ

 近年、イタリアから日本への輸入がじわりと増加している。2016年のイタリアからの輸入総額は9517億円で、前年比4.4%増となった。伸び率はそれほど大きくないが、その増加の主因が、日本で大ヒット中の“ある大人向け”商品が増加の牽引(けんいん)役になっていることが、財務省貿易統計で判明した。

 その商品とは、世界的たばこメーカー、米フィリップ・モリス・インターナショナルが発売した加熱式新型たばこ「iQOS(アイコス)」だ。葉タバコを燃やして煙を吸い込む通常の紙巻きたばこと異なり、加熱式たばこは加熱用のホルダーに専用の短いたばこ「ヒートスティック」を差し込み、電気で加熱して発生した蒸気を吸う。

 煙や灰が出ず、紙巻きたばこに比べて臭いも残らないため、「次世代たばこ」として日本で急速に人気が高まった。アイコスは現在、世界20カ国で販売されているが、売り上げの9割以上を日本が占めるという。

 実は、このアイコス用のヒートスティックを生産しているのが、同社のイタリア工場なのである。

 貿易統計によると、アイコスの試験販売が名古屋市で始まった14年には、ヒートスティックを含む「パイプたばこ、その他」のイタリアからの輸入額は7591万円で、この年のイタリアからの輸入総額(9104億円)を考えても微々たるものだ。

 だが、12都道府県で販売が開始された翌15年は24億614万円に急拡大。さらに全国販売を開始した16年は502億9723万円で、同年の総輸入額(9517億円)の5.2%を占めた。わずか3年で輸入額は662倍の驚異的なペースで市場を成長させた。

 同社はヒートスティックの世界全体の販売目標を16年の20カ国、150億本から、17年に30~35カ国、500億本に引き上げる方針で、来年1月にはギリシャ工場での生産も開始する予定だ。将来的には、全ての紙巻きたばこを加熱式たばこに切り替えることを目指しており、“アイコス特需”はしばらく続きそうだ。(西村利也)