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公明、中国・改憲は沈黙 公約では積極姿勢

 公明党が子供1人10万円給付など衆院選(19日公示、31日投開票)の公約で掲げた政策について、岸田文雄首相から次々と前向きな国会答弁を引き出している。もともと「小さな声を聴く力」を標榜(ひょうぼう)し、財政出動をいとわない政策を訴えてきただけに、「聞く力」や分配戦略を重視する首相との親和性は高い。一方、公約に明記した中国をめぐる安全保障上の問題や憲法論議はほぼ封印しており、分かりにくい立ち位置となっている。

 「公明が主張し、世論も期待している政策でアクセル役を果たす面もある」。公明の山口那津男代表は15日、報道各社のインタビューでこう述べた。政権のブレーキ役として存在感を発揮する機会が多い公明だが、先の臨時国会では衆院選を念頭に子育てや教育などの政策実現を求める場面が目立った。

 公明の石井啓一幹事長は12日の衆院本会議で、高校3年生まで1人当たり10万円相当の給付を提案。首相は「給付金などの支援を実行する」と明言した。さらに、マイナンバーカードの保有者や新規取得者に3万円分のポイントを付与する新事業や、新型コロナワクチンの3回目接種の全額公費負担などを矢継ぎ早に訴え、いずれも首相の前向きな言質を得た。

 山口氏は「連立政権における公明の役割を首相自身が評価している」と胸を張る。石井氏も12日夜のBS番組で「(リベラル色の強い)宏池会(岸田派)の首相はわれわれと政策的な親和性が高い」と語った。

 一方、山口氏や石井氏が中国をめぐる安全保障や憲法改正に踏み込む場面は見られない。公明は公約で中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での活動を批判し、人権問題についても懸念を表明。憲法をめぐっても国会議員の任期延長を可能とする改正を提起するなど、従来にない積極的な姿勢を示している。

 山口氏はこの点を記者団から問われると「外交・安全保障は衆院の石井氏が代表質問で聞く役割分担にしていた」とかわした。ただ、石井氏は中国の人権問題や海洋進出にわずかに触れるだけにとどめ、日中の相互理解を促した。憲法改正への言及はなかった。

 山口氏は14日の衆院解散後に東京都内で第一声を上げたが、ここでも中国問題や憲法は提起せず、記者会見などで問われれば答えるという受けの姿勢に終始する。公約に掲げたこれらのテーマは、今のところ保守層の支持を取り込むためのポーズだったようにしか映らない。(石鍋圭)