台湾パイン、人気急上昇の背景は...中国の輸入停止と東日本大震災の被災地の「恩返し」

2021年5月12日 12時00分
 これまでなじみの薄かった台湾産パイナップルの人気が加速している。日本の今年の輸入量は4月末時点で7000トンを超え、既に昨年の年間輸入量の約3・5倍となった。その背景にあるのが、中国が3月から始めた輸入停止措置だ。台湾の窮地を救おうと、東日本大震災の被災地では台湾産パイナップルを買い支える取り組みが始まっている。(青木孝行)

◆輸出先9割を占めた中国の措置で窮地に

 台湾の対日交流窓口機関の台北駐日経済文化代表処によると、台湾産パイナップルの昨年の対日輸出量は約2100トンで、今年も1~2月は81トンだったが、3月以降に出荷量が急増し、4月末までに計7311トン(速報値)に上っている。
 中国は台湾産パイナップルを巡り、検疫上の問題を理由に、3月1日から無期限の輸入停止措置を取った。台北駐日経済文化代表処によると、台湾の昨年の輸出量は4万5621トン。輸出先としては中国が4万1661トン(91・3%)を占めていた。禁輸措置を受け、台湾は他国への輸出促進や国内消費拡大に躍起になっている。

◆岩手で始まった「買って支援」

 「今度は日本が台湾を支援する番だ」。10年前の東日本大震災時に台湾から多額の義援金が届けられた被災地では、救いの手を差し伸べようと動き始めた人たちがいる。

花巻温泉の宿泊客に振る舞われる台湾産パイナップル=岩手県花巻市で(同温泉提供)

 ホテル・旅館を経営する「花巻温泉」(岩手県花巻市)は、4月末に台湾産パイナップル6トンを取り寄せ、宿泊客にふるまう「台湾パイナップルフェア」を開催している。宿泊客からは「酸味やえぐみがほとんどなくて、とても甘い」と好評という。
 新型コロナウイルス禍前、同施設には台湾から毎年約4万3000人が訪れていた。営業企画課の佐々木恒さん(47)は「東日本大震災以降、台湾の人たちにずっと支えられてきた。パイナップルを買うことで、少しでも支援につながれば」と話す。

◆芯まで甘く、売れ行き好調

 台湾産パイナップルは、日本での消費量の9割以上を占めるフィリピン産よりも割高だが、筋が少なくて芯まで甘い特徴が、消費者の人気を集めている。
 大手スーパーの西友(東京)は昨年から台湾産パイナップルの取り扱いを始め、今年は3月中旬から販売を開始した。価格は1個400~500円台(税込み)。関東地方でチェーン展開するヤオコー(埼玉県川越市)では、今年4月の販売数量が、昨年4月に比べ約4倍となった。価格は大きさにより異なるが1個300~900円台(税込み)。同社の広報担当者は「売れ行きが好調で、供給が逼迫ひっぱくする状況が続いた」と話す。
 台湾産パイナップルは通年収穫されているが、出荷の最盛期は4~6月。台北駐日経済文化代表処経済部の担当者は「6月まで出荷のピークは続く。今後、さらに需要が伸びるのではないか」と日本での需要拡大に期待している。

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