カナダ、先住民同化政策の闇…寄宿学校跡地で大量の子どもの遺骨 首相「暗くて恥ずべき歴史の一章」

2021年7月8日 11時09分
 【ニューヨーク=杉藤貴浩】カナダでかつて先住民の同化政策として政府やカトリック教会が運営した寄宿学校跡で大量の子どもの遺骨や墓が見つかり、国内に動揺が広がっている。今月1日の建国記念日は祝典を中止する都市が続出。各地の教会で不審火やいたずらが多発するなど不穏な動きも出ている。
 発端は、5月に西部ブリティッシュコロンビア州の先住民寄宿学校の跡地で記録のない215人の子どもの遺骨が発見されたことだ。調査は地元先住民団体などが地中レーダーを使って実施。公共放送CBCは「中には3歳児のものも含まれていた」とする関係者の話を伝えた。
 カナダでは19世紀から1990年代まで、政府とカトリック当局が先住民の子どもを親元から強制的に引き離し、各地の寄宿学校で生活させた。学校は139カ所にも上り、伝統文化や固有言語の伝承を絶つ同化政策を進めた。対象となった子どもは15万人以上で、学校では暴力や性的虐待、病気や栄養失調が多発したとされる。

墓標のない751基の墓が見つかったサスカチワン州の寄宿学校跡地で、テディベアを置くカナダのトルドー首相=AP

 6月には、中部サスカチワン州の寄宿学校跡地の周辺で751基の墓標のない墓が発見され、ブリティッシュコロンビア州の別の跡地でも同様に182基が見つかった。
 カナダ政府は2008年に同化政策を謝罪。15年の報告書では「文化的虐殺だった」などと誤りを認めているが、被害の詳しい状況は明らかになっていなかった。相次ぐ遺骨や墓の発見は、トルドー首相が「わが国の歴史の暗くて恥ずべき一章を痛烈に思い出させる」と表明するなど、全国に怒りと困惑を広げた。
 例年7月1日は1867年の英国からの自治権獲得を祝うが、今年は各地で花火やパレードの中止や延期が相次ぎ「連帯と反省の精神を持って犠牲者を思い返そう」(中部メルビル市)といった声が上がった。
 先月からは各地のカトリック教会で放火や不審火が発生。CBCによると西部カルガリー市では5日時点で11の教会が赤いペンキで塗られるなどの被害に遭い、寄宿学校問題との関連が取り沙汰されている。

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