コロナ患者に在宅でステロイド投与、8割が症状改善 横浜市が緊急避難的措置として開始

2021年9月15日 20時06分
パソコンを見ながら自宅療養者に電話をかける立川医師=横浜市立市民病院で

パソコンを見ながら自宅療養者に電話をかける立川医師=横浜市立市民病院で

 新型コロナの自宅療養者を医師が電話で診療し、ステロイド薬を処方する取り組みを横浜市が先月から始めた。自宅での症状悪化、死亡を防ぐための緊急避難的な措置で、服用した患者の約8割の症状が改善した。担当医師はその効果に手応えを感じている。(石原真樹)

◆在宅死亡も出る中で…

 感染者が急増した8月下旬、病床が埋まって市内の自宅療養者は7700人以上になった。在宅死亡も出る中、市と市立市民病院が連携し、考案された。
 まず、血中酸素飽和度が93%以下と呼吸不全に近い状態になった自宅療養者の情報を、横浜市が市民病院に伝える。感染症内科の立川夏夫医師が電話診療をして必要と判断したら9日分のステロイド薬を処方し、当日中に自宅に配送。翌日と4日目、8日目には、同病院の看護師らが電話で症状を確認する。

◆医師「効果はあった」

 開始した8月23日~9月3日に自宅療養者187人が電話診療を受け、110人がステロイド薬を処方された。約82%の90人は症状が改善。14人は改善せずに入院したほか、胃痛で服用を中止するなどした人が6人いた。
 服用していない患者との比較はこれからだが、立川医師は「入院に至らずに済んだ人がこれだけいたので、効果はあったのではないか」と話す。
 川上幸子患者総合サポートセンター担当課長(助産師)によると、服用翌日に熱が下がっても、血中酸素飽和度はすぐに上がらず、8日目も95%程度にとどまるなど症状の改善に時間がかかる患者が多かった。服用後に胃痛や筋肉痛を訴える患者もいたが、深刻な副作用とみられる事例はなかったという。

◆地域で患者を診られる体制を

 「自宅で患者が亡くなるのは、必要な医療が行われていないということ。自宅で治療を開始するしかないとの思いだった」と立川医師は振り返る。ステロイド薬なら、内服薬で在宅患者にも処方できると考えたという。副作用などを懸念する声に対して「心配は当然。採血やエックス線で検査して治療するのが本来。電話だけで良いとは思っていない」と話す。
 現在は新規感染者が減り、ステロイド処方が必要な患者は入院できるようになった。だが、第5波の収束はまだ見通せず、今冬に感染が再拡大する可能性もある。
 今後を見据え、小松弘一病院長は「重症の入院患者も診ている病院が在宅(患者のフォロー)もするのは大変。役割分担が必要ではないか」と地域のクリニックとの連携の必要性を指摘する。市健康安全医務監の船山和志医師は「開業医にもステロイド治療が広がりつつある。地域で患者を診られる体制をつくりたい」と話した。

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