<新型コロナ>人工呼吸器 9府県不足か ピーク時、重症用

2020年4月6日 02時00分
 新型コロナウイルスの感染が流行ピークに達した際、重症患者の治療に必要な人工呼吸器が、宮城や栃木、神奈川、大阪、福岡など九府県で不足する可能性が高いことが五日、共同通信社の分析で分かった。一部の重症患者に対応できない「医療崩壊」が懸念される。専門家は「機器を扱える人材も限られる。医療崩壊の防止策を具体的に考えるべきだ」と指摘する。 
 日本呼吸療法医学会などは、各都道府県の臨床工学技士会を通じて、人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」の台数調査を実施した。期間は二月十二~二十日で、計千五百五十八施設のデータを集計。人工呼吸器は全国に計二万二千二百五十四台あり、他の病気の治療などに使っている台数を除くと一万三千四百三十七台が新型コロナ患者にも対応可能だった。
 一方で、厚生労働省が公表した流行ピーク時に関する推計式で重症患者数を試算。一人の感染者が平均二人にうつすとの想定で、重症患者数は東京が最大九百三人、兵庫が四百三十一人、福岡が三百八十八人などだった。これらの数字と、都道府県別の人工呼吸器の対応可能な台数を比較すると、九府県で人工呼吸器が不足することが判明した。
 人工呼吸器数に占める重症患者の割合が八割を超えて逼迫(ひっぱく)する自治体も、北海道や茨城、静岡、愛媛など八道県に上った。
 政府はさらなる感染拡大に備えて、人工呼吸器やエクモの増産を図っている。厚労省の担当者は「都道府県別にみると厳しい自治体もある。広域で機器を融通し合う必要がある」と話す。
 より重篤な患者の治療に不可欠なエクモは、全国に約千四百台あるが、高度な技術と経験がある医師や看護師らでないと扱えないため、新型コロナの重い呼吸不全患者に使用できるのは三百台程度とされている。
 こうした現状を踏まえ、日本集中治療医学会の西田修理事長は「重症肺炎患者に対して人工呼吸器を扱える医療従事者や集中治療室の数も足りない。人材をどう集中、配分するか議論する必要がある」としている。

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