香港デモ1年 「自由の危機知って」都内のカメラマンが写真展

2020年6月8日 13時58分

昨年9月、デモの参加者をペッパースプレーで威嚇する香港警察=いずれも柴田のりよしさん撮影

 香港で大規模なデモが始まって九日で一年を迎えるのに合わせ、カメラマンの柴田のりよしさん(53)=東京都江東区=が十日から、現地の姿を伝える写真展を都内で開く。香港に高度な自治を認めた「一国二制度」が危機にある状況を生々しい写真を通じて伝え、日本でも関心が高まるよう求めている。 (三輪喜人)

カメラマンの柴田のりよしさん(本人提供)

 香港のデモは、事件の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする逃亡犯条例改正案をきっかけに、中国政府による政治弾圧に利用される恐れから、市民の抗議行動が昨年六月から本格化した。同月十六日には主催者発表で約二百万人が参加した。
 学生時代から中国やチベットに関心があった柴田さんは、昨年六月下旬から十二月までに三回、合わせて約一カ月半滞在した。
 デモには中学生ぐらいの若者から、つえをついた高齢者まで幅広い年代の人がいた。会員制交流サイト(SNS)でつながった若者たちがスマートフォンで連絡を取りながら、個人や小グループで参加する姿が印象に残っている。
 時間帯によっては、ドラえもんのコスプレをした参加者など穏やかな雰囲気だった。一方で前線で催涙弾を浴びることもあったが、ゴーグルやマスクを着用して撮影を続けた。

昨年10月、警察隊から逃げるように移動する黒服の若者たち

 デモの参加者に話を聞くと、一九九七年に英国から返還された後に生まれた若者には、「普通選挙もなく、中国が頭ごなしに物事を決めていってしまうのではないか」という将来への不安を感じた。
 その後、発端となった条例改正案は撤回され、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、抗議行動は小康状態となった。しかし今年五月、中国当局が「反体制的」とみなす活動を取り締まる「国家安全法」を香港にも導入することが全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で決定。自由な言論が制限される恐れがあるとして、香港では再び抗議活動が起きている。香港在住カメラマンが撮影した五月下旬のデモなどの写真も会場で展示する。
 柴田さんは「香港が大切にしてきた自由や民主の文化が奪われてしまう。日本でもさらに関心を持ってほしい。全日程で会場にいるので、ぜひ質問してほしい」と話している。
 ◇ 
 「反抗 香港は、今」と題した写真展は、十〜十五日、渋谷区恵比寿南一、アメリカ橋ギャラリーで開く。入場無料。

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