三味線老舗「東京和楽器」の灯守っ「たる」! 和楽器バンドが支援ライブ

2020年8月16日 06時00分

横浜アリーナでライブをする和楽器バンド=ユニバーサルミュージック提供


 業績悪化から廃業を決めていた三味線の大手老舗メーカー、東京和楽器(東京都八王子市)への支援を名乗り出た8人組人気ロックバンド「和楽器バンド」が15日、横浜アリーナ(横浜市港北区)でライブを開いた。ボーカルの鈴華すずはなゆう子さんはライブ中、「東京和楽器さんのための『たる募金』を行っています。日本の伝統文化を守るきっかけになればと思います」と協力を呼び掛けた。
 同社は創業135年の業界最大手。近年の需要低迷と、新型コロナウイルスの影響などから業績不振となり、8月15日で廃業することになったと本紙が報じた。その報道に、バンドのメンバーが「大切な伝統芸能の灯を守ろう」と立ち上がった。

◆「たる」に込められた思い

 この日、募金に協力した東京都青梅市の専門学校生小池はやてさん(19)は和太鼓をやっていて、「和楽器は日本の文化であり、残っていってほしいと思う」と伝統継承の大切さを強調。「たる」の中には、「和楽器の音を後世に伝えたい!頑張って下さい」とのメッセージを張った瓶もあった。
 同社には、廃業を伝えた報道後、追加の大口注文が入ったため、今秋ころまで稼働することになった。
 ライブは有料生配信も行われ、オンラインでの寄付も受け付け、会場のたる募金、ライブの収益の一部と合わせて東京和楽器に贈る。ライブは16日も横浜アリーナで行われる。

◆東京和楽器の代表と面会

コンサート終了後、東京和楽器の大瀧勝弘代表(右から2人目)と話す和楽器バンドの(左から)蜷川べにさん、鈴華ゆう子さんといぶくろ聖志さん(右端)=横浜市港北区の横浜アリーナで


 バンドはもともと2月末と3月にライブを行う予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となり、ようやくライブが実現。だが、コロナ収束の見通しは立たず、この日もリスク回避のためさまざまな対策を講じた。通常は1万人以上の観客を収容する横浜アリーナだが、この日は5000人以内に抑え、入り口で検温したり、消毒や換気を徹底したりするなど、細心の注意を払った。
 当初、東京和楽器が廃業の日としたのが8月15日。この日にライブが決まっていた和楽器バンドのメンバーは「8月15日廃業」という本紙報道を見て「運命的なものを感じた」といい、支援に動きだした。
 東京和楽器の大瀧勝弘代表(80)はライブを鑑賞し、終演後にバンドメンバーのうち3人と面会。「華やかで迫力あるステージでびっくりしました。感動です」と話した。
 ボーカルの鈴華ゆう子さんは「私たちは楽器があってパフォーマンスができる。これからも作り続けてください」とエールを送った。津軽三味線の蜷川べにさんも「(コロナなどで)ライブができるか心配でしたが、できてよかった。これからも支援の輪が広がっていけばいい」と話した。
 大瀧代表は「(たる募金を)業界や会社のために役立てたい。ありがとうございました」と感謝の気持ちを語った。 (山岸利行)

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