<かながわ未来人>「地味だけど大事」に光 株式会社ホルグ社長・加藤年紀(かとう・としき)さん(37) 

2020年8月31日 07時09分
 ともすれば地味で目立ちにくい地方公務員の活躍に光を当てる「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」を始めて四年目。今月、新たに十三人の表彰を発表した。
 不動産のインターネット広告を担う会社に勤めていた二〇一二年から四年半、インドネシアの子会社で最高執行責任者を務めた。駐在した首都ジャカルタは都心でも停電や洪水が起き、交通渋滞は日常茶飯事。道路もボコボコで「行政がもう少し頑張れないか」。そう感じた時、日本の自治体で公務員が果たしている役割を初めて意識した。
 「行政はインフラやセーフティーネットを独占的に担う。競争原理が働きにくい半面、彼らの仕事の成果が上がれば、市民生活全般が良くなる可能性が高い。活躍に光を当て、実務のノウハウを自治体を越えて取り入れることができたら」
 そんな思いから帰国後の一六年、地元の横浜市で株式会社「ホルグ」を立ち上げた。社名は「Heroes of Local Government」の頭文字。「地方自治体のヒーローたち」という意味だ。ネットメディアを運営し、各地で活躍する地方公務員や首長を取材して配信するほか、地方公務員向けに学びや交流の機会を提供している。
 個々の活躍を表彰する「アワード」は翌一七年に始めた。現役の地方公務員が推薦した中から審査する仕組みだ。地方公務員の業務は多岐にわたり、公会計や債権回収など一般市民から見えづらい分野で力を発揮するスペシャリストもいる。「行政は地味だけど大事。個々の取り組みを一般市民や他の自治体に伝えたい」
 今年、自治体は通常業務に加え、新型コロナウイルス対応に追われている。「経験したことのない事態だからこそ、自治体の発信力や修正力が問われた」。医療体制の確保、特別定額給付金の支給などで自治体によって対応に差が生じたのは「首長のリーダーシップも重要だが、日頃から職員が積極的にチャレンジをしやすい空気を醸成できていたかどうか」と指摘する。
 本年度から奈良県生駒市役所で人事改革も担う。「組織に所属しないと分からないことがある」と、同市のプロ人材公募に応募した。「地方公務員に力を発揮してもらうという目的は同じ。いい事例を作り、公務員の個性を生かす動きにつなげたい」(杉戸祐子)
<地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード> 2017、18年は各12人、昨年は13人が受賞した。今年は113人の応募者から、過疎化の中で料理人を育成して飲食店の起業を促進し、地産地消で農家も支援する仕組みをつくった島根県邑南町、地域と協力して下水道事業費を大幅削減した岡山県備前市、教育と福祉の連携などで児童虐待防止に尽力する沖縄県の職員ら13人が受賞した。

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