菅首相、宣言解除で感染再拡大の際の責任問われるも…<会見詳報>

2021年3月18日 21時42分
 菅義偉首相の18日の記者会見の詳報は次の通り。
 【冒頭発言】
 新型コロナ対策本部を開催し、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県で3月21日で緊急事態宣言を解除すると決定した。飲食店の時間短縮を中心に行った対策は、成果を上げている。

緊急事態宣言の全面解除を決め、記者会見する菅首相

 1都3県の感染者数は1月7日の4277人から昨日の725人まで8割以上減少している。東京では2520人から本日は323人となり、解除の目安としていた1日あたり500人を40日連続で下回っている。
 2週間宣言を延長し、病床の状況などを慎重に見極めて判断すると申し上げてきた。目安を安定して満たしており、解除の判断をした。しかし、感染者数には横ばい、微増の傾向が見られ人出が増加している地域もあり、リバウンドが懸念されている。変異株の広がりも警戒する必要がある。今が大事な時期だ。
 解除にあたり、感染の再拡大を防ぐため5本の柱の総合的対策を決定した。
 第1の柱は、飲食の感染防止だ。マスクを外した会話が多くなる飲食が対策の中心だ。1都3県では各都県の要請により21時までの飲食店の時間短縮を継続し、1日4万円の支援を行う。これから卒業式、入学式、歓送迎会などの季節となるが、大人数の会食は控えるようお願いする。
 第2の柱は変異株への対応だ。国内の監視体制を強化するために、全都道府県で陽性者の検査を行っているが、今後抽出する割合を現在の10%から40%程度に引き上げて変異株を割り出し、拡大を食い止める。航空便の搭乗者数の抑制で入国者の総数を管理するなど水際措置も強化する。
 第3の柱は、感染拡大の予兆をつかむ戦略的な検査だ。繁華街や駅などでの無症状者のモニタリング検査を順次、主要な大都市で大幅に拡大し、来月には1日5000件の規模とする。高齢者施設などで今月末までに3万カ所に検査を行い、来月からはさらに集中的な検査を実施する。
 第4の柱は安全、迅速なワクチン接種だ。変異株を含め感染対策の決め手となる。医療関係者への優先接種は順調で、現在は1日8万人規模だ。4月12日からは高齢者への優先接種が始まる。6月までに1億回分が確保できる見通しだ。
 第5の柱が次の感染拡大に備えた医療体制の強化だ。コロナ病床、回復者の病床、軽症者療養のホテル、自宅療養などの役割を分担し効果的に療養できる体制を各都道府県でつくる。
 感染拡大を2度と起こしてはいけない。その決意を改めて自らに言い聞かせている。早期にリバウンドの端緒をつかみ、ワクチン接種により発症と重症化を抑え医療体制を強化する。皆さんに制約をお願いする以上、国も自治体と一丸でできることは全てやる。一進一退はあっても、必ず先には明かりが見えてきている。自ら先頭に立ち、国民の命と暮らしを守り抜く覚悟で全力で取り組む。
 【質疑応答】
 記者(幹事社・ジャパンタイムズ) 宣言解除でコロナ感染が拡大した場合、責任をどう取るか。
 首相 「Go To キャンペーン」の停止、緊急事態宣言といった必要な判断を行ってきた。感染防止にかじを切り効果が出ている。コロナ病床などが不足したことは、真摯(しんし)に受け止める。
 記者(幹事社・朝日新聞) 3度目の宣言を出す可能性は。その場合の五輪開催への影響は。
 首相 宣言を2週間延長し、新規感染者数も病床の逼迫(ひっぱく)状況も解除の目安を下回っている。再び宣言を出すことがないよう、5つの対策をやる。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は五輪を開催する方向で準備を進めている。開催を応援していきたい。

会見する菅首相

 記者(NHK) 今週の日米2プラス2で、両国が結束し中国に向き合う姿勢を打ち出した。日米同盟強化にどう貢献するか。
 首相 日米同盟は外交、安全保障の基軸。米国などの国々と連携したい。事情が許せば来月前半にワシントンを訪問し、バイデン大統領との個人的な信頼関係を深めたい。新型コロナ、気候変動、中国による諸課題、北朝鮮による拉致問題などの課題について連携を確認したい。
 記者(日本経済新聞) ワクチン接種のスピードを速める考えはあるか。ワクチンの打ち手は医師や看護師に限定しているが、規制緩和の考えは。
 首相 ワクチンは感染対策の決め手。1日でも早く全国の皆さんに届けたい。接種する者は安全性を確保する観点から、医師や看護師に限定されている。
 記者(ウォールストリート・ジャーナル) 日中関係、米日中関係についてどのような考えでバイデン大統領と会談するか。
 首相 日米首脳会談でも日中関係などについて率直に話し合いたい。
 記者(共同通信) 若者に感染対策への協力を呼び掛けてきたが十分に浸透できていない。原因は。
 首相 会員制交流サイト(SNS)などへの広報が欠けていたのではないか。私自身も若者への発信が足りなかった。
 記者(フジテレビ) 宣言解除と衆院解散総選挙の関係性をどう考える。
 首相 新型コロナウイルス(感染)の収束に向けてしっかり対応していくのが私の役割。全く解散については考えていない。9月までが(自民党総裁)任期だから、その中で考えていくことは事実だが、優先すべきはコロナの収束だ。

記者会見する菅首相。右は政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長

 記者(フリーランス・大川豊氏) 電子マネーを配布し若者に関心を持ってもらうことも可能では。
 首相 電子マネーの発想は提言と受け止める。今は全く考えていない。
 記者(中国新聞) 参院補選でのコロナ対策や東京から選挙応援に入るリスクをどう考えるか。辞職した河井案里前参院議員の選挙で自民党が拠出した1億5000万円が、買収の原資になったとの証言がある。
 首相 感染防止の徹底、期日前投票の積極的な利用で混雑を防ぐなどのやり方がある。選挙に東京から行くか行かないかは、その時々の状況で変わる。資金は党で監査するが、書類が押収されできない。戻ってきた時点で対応する。
 記者(読売新聞) 新型コロナ特措法で新設したまん延防止等重点措置を活用する考えは。
 首相 都道府県の特定の地域で感染拡大し、都道府県全体に波及する恐れがある時、措置を機動的に行えるようにした。専門家に相談し、必要なら行う。
 記者(米ブルームバーグ通信) 欧米では経済対策の財源として増税を検討している。日本でも増税が必要か。消費税を10年間上げる必要がないという考えに変わりはないか。
 首相 日本と海外の違いは、海外ではロックダウンやコロナ対策を何回となく行っている。財政出動で厳しくなっているのも事実だが、できる限り対応する。日本の失業率は、先進国で最も低い2.9%だ。

菅首相(左)と尾身会長

 記者(TBS) 来週から検討するのは、まん延防止等重点措置を適用する基準か。
 尾身茂氏 昨年、(感染状況を示す)ステージという考えを示したが、その数値を変える必要があるかなどを検討する。
 記者(フリーランス・安積明子氏) 2020年の自殺者は09年以来の増加で、女性、特に10代、20代の若年層が増えている。どう対策を講じるか。
 首相 非正規雇用の方への支援や、自殺相談所などをやっているNPOやボランティアへの支援をしている。若い人はSNSで相談をしているので、政府として支援する。
◇            ◇

 【首相会見の流れ】

 菅首相の冒頭発言後、内閣記者会の幹事2社(各社の持ち回り制)が順に代表質問した。その後、司会の小野日子ひかりこ内閣広報官が挙手した記者の中から指名。本紙記者は指名されなかった。幹事社を含め13人が質問した後、挙手している記者がいる中で、予定していた時間が過ぎたとして55分で打ち切った。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も同席した。

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