男性にしてミスiDファイナリスト! ゆっきゅんって何者?
金髪で王子様ルックのアイドル、ゆっきゅんをご存知だろうか。男性でありながらミスiD2017ファイナリストにまで上り詰め、現在「電影と少年CQ」というアイドルユニットの一員でもある彼に、ファンは勇気をもらっているという。その1番の理由は、彼が独自のアイドル像を貫いている姿勢。ゆっきゅんはなぜアイドルを目指そうと思ったのか。そしてアイドル活動を通して伝えたいメッセージとは。その不思議な魅力に迫る。
プロフィール:
ゆっきゅん/アイドル
1995年岡山県生まれ。2014年に上京し、アイドル活動を開始し、ミスiD2017ファイナリストに選出。2016年より、アイドルユニット電影と少年CQのメンバーとして活動しつつ、ソロでもライブ、執筆、演技、ZINE制作など積極的に輝いている。山戸結希プロデュースのオムニバス映画『21世紀の女の子』内の枝優花監督作『恋愛乾燥剤』に出演。2019年2月8日(金)よりテアトル新宿にて公開予定。
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男性で初のミスiDファイナリストに選出
「ミスiDの枠をまたひとつ壊してくれたパイオニアとして、賞とか関係なく存在を画一している彼は、間違いなくこの星で生き残る方だろうなと思いました」(ファンタジスタさくらだ)、「ゆっきゅんはゆっきゅんしかいない。ゆっきゅんしかゆっきゅんできないそれがなによりすごいこと。もっともっと自分で自分の商品価値を上げていくゆっきゅんをガンガン見たい」(根本宗子)。2017年のミスiDのファイナリストに選出され、ゆっきゅんが審査員から選評された言葉の一部だ。この時すでに、ゆっきゅんは自身が目指すアイドル道を突き進んでいた。
2014年に上京したゆっきゅん。昔から大のアイドル好きで、人前で歌って踊ることが大好きな彼が、東京で自らアイドルを目指し始めたのは必然だった。
――アイドルになろうと思ったきっかけはありますか?
最初、東京に出てきたらおもしろい人がたくさんいると思っていたんです。でも、大学に行ってみても、自分以上におもしろい人や行動力のある人っていなかった。アイドル好きが高じて、同じくアイドル好きの女の子の友達らとノリでアイドルユニットを組もうという話もしていたんですけど、結局やる気があったのは自分だけだった。だから思い切ってひとりでアイドルをやってやろうと思ったのが最初のきっかけですね。
――最初はどのような活動をされていましたか?
SNSを中心に、アイドルとしてゆっきゅんの活動をスタートさせました。名乗るところからですね。そこからライブに誘ってもらったり、自分でイベントを企画したり、写真集やジンを作ったり、自分で居場所を作っていきました。アイドルが乱立し、少し前まで恥ずかしいものだった自撮りも一般化して、名乗るだけでアイドルになれるような時代の空気がありました。アイドルは見ている側の「自分にとってアイドルなんだ」という思いがあってこそ存在するので、名乗るだけでなれたわけでもなかったと思っていますが。
――今のスタイルが確立したのはいつ頃からですか?
当初はキャッチーだからセーラー服などアイドルっぽいものを身に着けたり、自撮りを研究したり、女の子のアイドルがやっているようなことを真似て自分に取り入れていました。当時の自分にとって必要な行動だったと思っていますが、あの頃は自分の良さがわかっていなかったんです。ある時「アイドル」でいるために、アイドルたちの中で、今かわいいとされていることを僕は別にやらなくてもいいし、自分という存在は自分しかないということを、もっと生かさないといけないと気付きまして。そこからまず、金髪にしました。
みんな着たい服を着て、やりたいことをやったらいい
――いきなりイメチェンですね。服装の変化はありましたか?
今日のフリルのトップスや白タイツといった服装、別に衣装ではなく私服なんです。かわいいものは相変わらず好きで普段から着ています。僕にとっては似合う服を着ているだけという気持ちで、かわいい服を着てもいいという選択肢があることで安心するんですよね。別にワンピースとかスカートとかも好きですし、着たい人は着たらいいと思っています。好きな自分でいられる服を、みんな勝手気ままに着られるといいのにと思います。
今のキャラクターでいうと、王子様と評されることが多いですね。数年前まで客観性0で生きてきたんですけど、上京してから周りの人達に「上品だ」とか「高貴だ」とか、"したいことしかしないわがままさ"などを指摘してもらい、それが自分の特性なのかなと気付かされました。その時、自分って「王子様」だったんだと気が付いたんです(笑)。そこからは少し意識していると思います。
――金髪の王子様! まさにアイドルですね。そこからミスiD2017に応募を?
はい。実はまだほぼ何もしていなかった2014年にもミスiDには応募したことはあったんですが書類で落選していて。でも、2年経って、いける気がしたんです。今の自分の内面と外面と力があれば受かるでしょ、と。実際に書類審査を通過できた時は、まぁそうですよねと自分で納得感がありました(笑)。この時は男性でミスiDのファイナリストになった人はいなかったので、当時わりと話題になりました。
――前例のないことなのに、最初から自信があったというのがすごいですよね。
はい。でも今まで自分が唯一無二の存在だという生き方をしていたので、他人と比べられることがなくて、誰かと比べられてみたかったんです。なので、ミスiDを受けて、オーディションという形でほかのファイナリストたちと同じ土俵に立ったことはいい経験になりました。が、結局誰とも比べられずに個性だけ認められて終わって、そんな自分を受け入れることになりましたね。
――現在はソロ以外にもアイドルユニットとしての活動もしていますよね。
ミスiDを受けた年に結成しました。「電影と少年CQ」というユニットで、ルアンちゃんという女の子と組んでいます。ユニットを組んだことで活動の範囲が広がりましたね。そろそろ他人と関わりながら活動をしてもいいかなという時期だったので、自分にとってとてもよかったです。
僕のような人間がスターになれることを世の中に見せなくてはいけない
――今の活動で目標にしていることはありますか?
アイドルを始めた理由は「まず歌って踊るのが好きだ」という出発点があったんですけど、続けるのは別のちゃんとした理由がなくては難しいと思っていて。というのも、僕は活動が楽しくて仕方なくて、今のファンの方々に支えられて細々とこのまま活動を続けることができてしまうことはわかっているので、それだけではダメだと自覚しているんです。なので、ちゃんと売れるという目標があります。僕のような人間がスターになれることを世の中に見せなくてはいけないんです。異端な人間が世の中のいたるところにいるのは当たり前のことだから、そんな認識で終わられたくないんです。そういう存在がちゃんと自分のままで輝いて、大きな舞台で活躍していることが僕が望む世界のあり方だと思っているので。
――ゆっきゅんのファンはどういう方が多いですか?
今応援していただいている方は女性が多いんですけど、僕は10代の男の子にも僕の存在がちゃんと届いて欲しいと思っています。僕みたいな、かわいいものが好きで、かわいい服が着たくて、趣味も周りの人とは違うような、そういう繊細な男の子たちはきっとたくさんいるはずなんです。僕が小さい頃、僕みたいな存在がいてくれたら救われていると思うので。社会から抑圧されたり排除されたりしている人が、僕の生き方を見て少しでも楽になってくれたら嬉しい。そういう祈りみたいなところはあります。その希望は、ただ続けてゆくことでのみ達成されると思っています。
――ゆっきゅんに勇気をもらっている方はとてもたくさんいると思います。
今は自分がやりたいことをやっているだけだけど、その姿を見て欲しいです。やりたいことをみんなやったらいい。そういうこともメッセージやコンセプトとして伝えられたらと思っています。今僕がやるべきことは、それをちゃんと示すこと。みんなが僕よりも強くないことも知っています。僕はできるから、その姿を見せて心強い存在に思ってもらえたらというのが願いです。
好きな服を着て好きなことをして、好きな自分で生きていく。多様性というものは、認めるとか、許すとか、そういう動詞で語るものではないと思う。そこに他人の承認は必要ないのだ。みんなもっと自由に生きていいのだ。みんなが常識といういくつもの呪縛から解き放たれるその日まで、ゆっきゅんはアイドルとしてちゃんと眼の前で踊ってくれている。