レゴでつくった要塞!? カナダのアビタ67団地。
アビタ67団地(HABITAT67)はブロックを積み上げてつくられている。
まるでレゴのような不思議なカタチの建築「アビタ67団地」は、1967年にカナダで開催されたモントリオール万博の一環として建てられたもの。モジュールと呼ばれるコンクリートのブロックを積み上げた12階建ての集合住宅です。ブロック数個で1世帯を構成し、当初は158戸の予定だったそうですが、合体を重ねて146戸に。
注目のバッグブランド「WANT LES ESSENTIELS DE LA VIE」(ウォント レス エッセンシャル デ ラ ヴィ)」のデザイナーであるデクスター・パート&バイロン・パートの双子の兄弟は「僕たちはこの過去と未来をつなぐ建物のデザインと、宇宙のような無限の可能性を感じさせる佇まいが大好きすぎて、今ではここの住人になってしまったほど」と
『VOGUE JAPAN』3月号 で語っています。当時は、誰もが庭のような屋外空間のある住宅を手頃な価格で手に入れられるように、との思いで作られたそうですが、今では超高級億ションなのだとか。
学生の修士論文が実現した、夢の建築。
アビタ67団地(HABITAT67)の全景は圧巻!
アビタ67団地を設計したのは、イスラエル人でモントリオール育ちの建築家モシェ・サフディ。地元の大学の修士論文で考えたシステムが、なんとこのモントリオール万博で実現することに。よくよく調べてみたら当時サフディは若干29歳でした! モントリオール中のレゴを買い占めて、実際にレゴをつかってスタディしたそうです。
近未来型コミューン、ウォールデン7。
赤くそびえたつ、ウォールデン7(Walden 7)。
アビタ67団地と似たタイプの要塞系の集合住宅といえば、1970年にスペイン人建築家のリカルド・ボフィルが手がけた「ウォールデン7」。18本のタワーから構成され、446世帯が暮らす超巨大アパートメントです。心理学的ユートピアのコミューンを描写したバラス・スキナーの『ウォールデン・ツー』にインスパイアされて、この名前にしたのだそう。たしかに、バルセロナ郊外の街にいきなりこの巨大建築物がそびえ立つ姿は異様でした。大きな赤茶色の外壁には、筒型のバルコニーがポコポコとついていて、近未来的な風貌。建物の内側は外観とはうってかわってブルーのタイルを多用。タイルで装飾された中庭もいくつかありました。
ちなみに、ショッピング好きのひとは訪れたことがあるはずのユナイテッドアローズ原宿本店メンズ館も、リカルド・ボフィルの建築です。
美しい回廊で古代にタイムスリップ。ガララテーゼ集合住宅。
ガララテーゼ集合住宅(Gallaratese Quarter)の美しい回廊。
イタリアを代表する建築家、アルド・ロッシが1970年に手がけたのが、ミラノ郊外にあるガララテーゼ集合住宅。学生時代の私は、期待に胸をふくらませてこの地に乗り込んだのですが、労働者向けにつくられたニュータウンの一角に何気なく佇んでいる姿に最初は戸惑いました。外観は白を基調としていて素っ気ない無骨な表情。しかし、なかに足を踏み入れると、やはり来てよかったと実感。2層分あるピロティに、薄い列柱が整然と数十メートル並び、まるで歴史的建造物にいるかのような気分にさせられました。現地のイタリア人はここがそんなに有名な建物だと認識していないのかもしれません。しばらくの間、ガラガラの回廊に私たった一人で、この無機質で詩的な名建築を堪能しました。
イタリア人建築家はプロダクトを残しているひとが多いですが、アルド・ロッシといえば、アレッシイのコーヒーメーカーが有名。こちらも名作です。
カサ・ミラは住めるガウディ建築。
バルセロナのメインストリート、グラシア通りのシンボル、カサ・ミラ(Casa Mila)。
ここまで紹介してきた、アルド・ロッシ、リカルド・ボフィル、モシェ・サフディの名前を耳にしたことがないひとでも、アントニオ・ガウディなら知っているはず。スペインでいちばん、いや世界一有名な建築家かもしれません。
バルセロナのメインストリート、グラシア通りに存在感たっぷりな面持ちで構える「カサ・ミラ」。1910年に竣工し、今も数世帯が実際に住んでいるそうですが、1984年にはユネスコの世界遺産に登録されました。美しくデザインされた鋳鉄の扉を開けると、楕円の中庭が二つ。地中海をイメージしたという波打つ外観と呼応するように、内観も曲線だらけです。
カサ・ミラの屋上に鉄仮面がいる!?
カサ・ミラ(Casa Mila)の屋上からはバルセロナ中を見渡せる。
何よりも心躍った場所は屋上。煙突と呼ぶべきなのか彫刻と呼ぶべきなのか、鉄仮面のような顔をしたグルグルの物体がニョキニョキと生えているのです。もちろん世界一有名な建築、サグラダファミリアもこの屋上から眺めることができます。ここは、設計のなかで後回しにされそうな屋上にまで十分に手をかけた、バルセロナの超高級住宅なのでした。