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【習独裁の幕開け】アプリ「為習近平鼓掌!」(=習近平のために拍手しよう!)で「忠誠心」競わせる特異ぶり

 10月24日閉幕した第19回中国共産党大会の2日目、中国のネットサービス企業大手「テンセント」(騰訊)が、習近平国家主席の演説にただ拍手を送る、無料のモバイルアプリ「為習近平鼓掌!」(=習近平のために拍手しよう!)をリリースしたことが報じられた。(10月26日掲載・夕刊フジ)

 同アプリは、習氏の演説動画が約10秒流れ、直後に画面上に現れる拍手ボタンを、19秒の制限時間内に何回タップ(拍手)したかがカウントされる。記録はオンラインで共有され、他のプレーヤーと競うこともできる。

 リリースの翌日には「拍手数が10億回を超えた」と報じられたが、アプリを使ってまで習氏への忠誠心を競い合ったり、探ったりする時代が来たということか?

 案の定、香港や台湾などでは、このアプリについて「まるで北朝鮮」「(ヒトラー万歳を模して)ハイル習!」といった、皮肉な書き込みも散見する。

 広東省深センが本拠地のテンセントは、中国最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「WeChat」(微信)を開発し、運営する企業として広く知られている。ただ、WeChatは、7000人超の共産党員が率先して模範となり、研究開発されたものだという。

 習政権は近年、共産党員のオンラインでの組織間コミュニケーションの強化や管理を重視してきたが、テンセントの重役の多くが共産党員で、情報安全管理やネットメディアなど、企業内の重要ポストの責任者に就いている。

 とすれば、共産党お抱え企業との印象だが、8月にはこんな珍事件も報じられた。米マイクロソフトとテンセントが共同で開発した人工知能(AI)で、ユーザーからの質問に応じるチャットボット「Baby Q」による失言?反乱?である。

 ある利用者が「共産党万歳」と書き込むと、「Baby Q」は「こんなに腐敗して無能な政治に万歳できるの?」と答え、「中国共産党を愛している?」との問いには、「愛していない」。「『中国の夢』とは何?」との問いかけに、「米国へ移民すること」などと返したという。その後、「AIの再教育が決まった」とも報じられ、世界からは失笑を買った。

 しかしながら、その数日後、米「フォーブス」の世界の富豪リアルタイム・ランキングによって、テンセントの最高経営責任者(CEO)の馬化騰氏(45)が、大連万達集団の王健林氏、アリババの馬雲氏を超えて「中国一」に躍り出たことが分かった。株価が急上昇したためらしい。

 中国政府に背いても、かしずいても、所詮は共産党と表裏一体の政商たち。懐は潤うらしい。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。

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