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【室谷克実 新・悪韓論】「韓国から学校体育が消滅!?」の情けないワケ 兵役も「鍛える」一転「楽しい軍隊」に

「強靭(きょうじん)な体力は国力だ」とは、韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の言葉だ。韓国は少なくとも、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権まで、スポーツエリートの育成とは別に、学童・学生の体育を重視してきた。

しかし、いまや文在寅(ムン・ジェイン)政権が進めるのは「朴正煕」的なるものの一掃だ。韓国から学校体育が消滅するのも時間の問題かもしれない。スポーツをすることなく育った人間、大部分が美容整形手術を受けた人間…。韓国はますます“異様な国”になっていくのだろう。

韓国は受験戦争大国であり、米国をしのぐ訴訟大国だ。さらに、「ヘリコプターママ」と称される父母がたくさんいる“親バカ”大国でもある。

そうしたなかで、体育の成績評価は大学受験の際の内申書にないとなれば、「学校から体育の時間をなくせ!」との要求が出るのは当然だ。

その要求を無視して(学校教育関係の規定に従い)行われた体育の授業で“うちのかわいい僕ちゃん”が転んで、ヒザをすりむいたりでもしたら…。ヘリコプターママは学校に抗議に押し掛けるどころか、「学校と担当教員は謝罪し、賠償しろ」との訴えを起こす。

だから、学校も教員も、体育から逃げていく。生徒が「風邪です」と言ったら、そのまま認める。

文化体育観光省の公表資料によると、10代の女性の72・9%、男子の46・5%が日常生活で運動をまったくしていなかった(朝鮮日報2012年12月18日)。

高校では週に3時間の体育の授業をすることになっているが、守っている高校は25%(朝鮮日報18年11月4日)。その25%の高校も、実際にはズル休みの生徒ばかりの授業であるわけだ。

しかし、こうした傾向は、文政権の本音と合致している。彼らからすれば「学校体育=朴正煕以来の積弊」なのだから。

文大統領は、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックに熱心に取り組んだかのように見える。が、気を付けてみれば、それは「北朝鮮の参加」と「南北合同チームづくり」に熱心だっただけだ。

女子アイスホッケーは南北合同チームにすることが、政治的に決まった。何人かの代表選手が脱落する。が、文氏は選手に向かって「これで、人気のない女子アイスホッケーも注目を浴びる」と冷たく言ってのけた。

選手の気持ちなんて、学生のころから政治運動だけしてきて、自転車にも乗れない為政者に分かるはずもない。

政治運動ではなく、体を動かす運動は、李王朝の昔から「下人がすること」だった。李王朝からの伝統、教育熱に浮かされた父母の意向、そして文政権の本音がピタリと合っているのだ。

韓国の20歳代以下の基礎体力が、体位の向上にもかかわらず低下していることは、09年には確認されていた。だが、受験戦争至上の風潮は、是正策を取らせなかった。

だから義務兵役も「鍛える」どころか、ウエートコントロールの運動をするような「楽しい軍隊」路線になった。将校はヘリコプターママを恐れて「息子さんを山岳訓練に参加させてもよろしいですか」と許可を求める。「ダメ」と言われたら、答えは「ハイ」のみ。

沈んでいく国ならではの風景がここにもある。

■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。著書・共著に『悪韓論』(新潮新書)、『崩韓論』(飛鳥新社)、『韓国リスク』(産経新聞出版)など多数。

1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。

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