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【高橋洋一 日本の解き方】韓国制裁、やるならこの手法! 外為法に基づく直接投資規制、民間は韓国からの企業撤退も

12日の衆院財務金融委員会で面白い審議があった。日本維新の会の丸山穂高氏が、韓国に対して具体的な対抗措置を検討しているのかと政府に質問したのに対して、麻生太郎副総理兼財務相は「関税(引き上げ)に限らず、送金の停止、ビザの発給停止とか、対抗措置にはいろんな方法がある」と答え、韓国への具体的な対抗措置について初めて本格的に明言した。

最近の文在寅(ムン・ジェイン)政権の日本に対する態度は常軌を逸している。韓国最高裁による、いわゆる「元徴用工」などへの判決、レーダー照射事件、慰安婦像問題の解決放棄などである。これらは、どのような立場から見ても韓国に非があるが、背後には、文政権の対日政策の変化が存在している。

これが麻生発言につながったとみられる。これまで政府が言ってきたのは、国際司法裁判所(ICJ)への提訴であるが、関税引き上げ、送金停止、ビザの発給停止が加わった。

すぐに思いつくものとしても、貿易保険の適用からの除外、フッ化水素などの輸出禁止、日本国内の韓国企業の資産差し押さえ、駐韓日本大使の帰国、国交断絶などさまざまなレベルの対処法がある。

韓国への制裁というと、勇ましいことを言う人が多いが、現行制度の理解不足ではないか。法の支配は必須なので、現行制度内か新規立法が必要だが、前者の方が即効性がある。

今回出た関税引き上げについては、現行制度内の対応は難しく、基本的に立法が必要となる。世界貿易機関(WTO)ルールとの整合性が懸念されるが、対韓進出で不利益を被ったとしてWTO提訴も同時に進めることがあり得る。

おそらく現政権では、100以上の制裁措置が具体的に検討され、実行の迅速性・容易性、日本への影響などの比較考量が行われているはずだ。

筆者としては、現行制度の枠内で新規立法が不必要な外国為替及び外国貿易法(外為法)での対応をお勧めしたい。筆者は旧大蔵省の官僚時代に外為法を担当したことがあるが、「国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき」にはいろいろな手が打てる。

閣議決定して対韓直接投資を規制するのが筋であるが、現在の事後届け出制を、事後チェックや事前届け出に変更することも可能である。この場合、緩い制裁になるが、それで韓国の出方を待つというのも状況次第ではあり得る。

日本企業でも韓国からの引き揚げの動きは既にある。昨年の日本からの対韓直接投資は約3割も減少した。

昨年の対韓直接投資については、日本が落ち込んだにもかかわらず、中国からの急増や欧米の堅調により、全体としては2割程度の増加になっている。

ただ、中国は米中貿易戦争の影響、欧州はブレグジット(英国のEU離脱)の混乱のために、今年はどうなるか分からない。

韓国経済は外資引き揚げに対して極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。こうした状況において、日本企業が韓国から引き揚げることは、韓国からの輸入品に対する関税引き上げより、はるかに強力だろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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