劇場版ポケットモンスター3作目の没プロット

登録日:2014/10/25 Sun 12:48:49
更新日:2024/02/02 Fri 00:06:33
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特報



に続くアニメ版ポケットモンスターの劇場版第三作目がついに公開決定!!
シリーズ構成を担当する首藤剛志氏が脚本を執筆!


ある日、ティラノサウルスの化石が発見される。

しかし、そのティラノサウルスの化石が突如と動きだす!!

そして化石は全てをなぎ倒すかのように直進を続けてしまったのだった!!

ティラノサウルスは、人もポケモンも関係なく滅茶苦茶にし踏みつぶしていく!

サトシとピカチュウは暴走するティラノサウルスを止めることができるのだろうか!?









概要

劇場版ポケットモンスター 結晶塔の帝王 ENTEI』の前に構想されていた『幻の第三作』と呼ばれている作品がある。

『ミュウツーの逆襲』『ルギア爆誕』に続く第三作目の劇場版の内容として当時のシリーズ構成だった首藤剛志が用意していた没プロット。
『アニメスタイル』のウェブサイトのコラムにてその存在が明らかにされた。

この明らかにされた没プロットはアニポケファンの間で大きい反響を呼んだ。
未だに首藤氏の関わった初期のアニポケを語る際には、『アニメ ポケットモンスター最終回の没プロット』と並んで話題のネタとなる。


ストーリー

このプロットには、普段はポケモンの世界では曖昧な扱いになっている『本来の動物』『進化論』などといった存在が登場している。
これは、首藤氏が執筆したアニメの小説版『ポケットモンスター The Animation』で明かされた世界観を元に書かれているからなのだろう。

ポケモンと人間しか動物のいない、いわば「ポケモン」ゲームが構築した架空の世界。
その世界で、実在した中生代の恐竜ティラノサウルスの化石が発見される。

この発見にポケモン世界の生物学会は大騒ぎになる。そして、重要なことに気がつく。
ダーウィンの進化論はある。動物と人間の進化の過程を説明している。
しかし、実際のポケモン世界に動物は人間とポケモンしかいない。いわゆる他の動物はいない。

古い記録を調べれば、この世界(アニポケの世界)に本物の動物がいた。
だが今はいない。記録には残っているが、人間の記憶にないのだ。

ポケモンが、この世に発生した時期が定かでない。
だが、ポケモンには進化論は通用しない。
なのに新発見のポケモンはどんどん増えていく。

過去に多くの学者が、ポケモンについて研究している。
しかしある時期になるとぴたりと研究を止め、田舎にひきこもり、それ以上の研究発表をしなくなる。
オーキド博士もその例に漏れない学者である。


どうなっているのだ?


記録には残っている動物(写真もあるし、ポケモン図鑑に「インドぞう」「恐竜時代」といった記述もある)が、人間たちの記憶から消えている。
だが誰もそのことに疑問すら持っていない。


何かこの世界の存在自体に、大きな秘密があるのではないか?


人間たちはティラノサウルスの化石の発見に、自分たちの生きている世界がなんなのかに疑問を抱き始める。
しかし、そんな余裕は無かった。

ティラノサウルスの化石の目の部分に青い光がともる。
そして、動きだす。一直線にどこかを目指し進んでいく。

その進路にある、人間の世界もポケモンの野生世界もおかまいなしだ。
川も海も一直線に越えていく。ともかく一直線だ。
邪魔になるものは、すべて、踏み倒していく。

ティラノサウルスを止めなければ、ポケモンと人間たちだけの世界の謎を解くこともできない。
その進路には、主人公サトシのマサラタウンもある。色々なポケモンの生活圏もある。

オーキド博士は、研究所をめちゃめちゃに踏みつぶされても


いつかこんな時が来ると思っていた。なぜ、こうなるのか分からんけれど……


としか言わない。実は、オーキド博士にも分かってはいないのである。
「いつかこんな時が来ると思っていた」以外には……。

ともかく、一直線に進むティラノサウルスの化石を止めなければ……。

ポケモンも人間も、本能的にティラノサウルスの化石を止めようとする。
ティラノサウルスの化石を止めなければ、自分たちのポケモンのいる世界の存在が危うくなる気がするからだ。

なぜ、危うくなるのかその理由は分からないが、本能的にそう感じるのだ。
ティラノサウルスの化石の進む進路には、様々な人間のドラマやポケモンのドラマがある。

ティラノサウルスの進行を追いかけて止めようとするサトシら主人公たち。もちろんロケット団トリオも同じだ。
ティラノサウルスの進行方向には、ロケット団の秘密基地もある。ロケット団本隊も化石の進行阻止に必死になる。

いつもの敵も味方もありはしない。

ともかく、ティラノサウルスの化石を止めようと懸命になる。
かろうじて冷静なのは、「自己存在」テーマのミュウツーぐらいである。
そして、ティラノサウルスの化石が止まり、動かなくなったその場所は……。

ラストシーンにて「いったいあれはなんだったんだろう?」「そして我々の世界はどんな世界なのだろう?」といったシーンが入る。
そのシーンの後にエンドマークが出て映画終了。

…といった構想を考えていたようである。


また、アニポケとは思い難い単語が見当たるプロットのように見える。

だが首藤氏が言うには、実際のプロットはもっと簡潔な物らしい。
生物学会が大騒ぎするシーンや、ダーウィンの進化論云々は、大幅に削ってあるとのこと。


没になった経緯

首藤氏自身は、プロット提出前に反対意見はあらかじめ予想していた。

首藤氏が予想した反対意見は「ポケモンの世界観が壊れる」といった話をされることだった。
だが首藤氏は「『ポケモン』の世界観に現実味を加え強固にすることになるかもしれない」としながらも「だからといって世界観は破壊しない」という考えだったようである。

そういった反対意見を覚悟・想定の上でプロットを提出したのだった。

しかし、首藤氏には予想出来なかった理由で、当時のプロデューサーだった久保雅一氏から却下をされる。
却下理由は「ポケモンの世界観を壊す」でも「テーマが難解すぎる」でもなかった。

それは「無機質なものに、意識が宿り動きだすというストーリーはヒットしない」という理由だった。

久保氏が以前プロデュースした『爆走兄弟レッツ&ゴー!!WGP 暴走ミニ四駆大追跡!』がヒットしなかった。
その映画の内容は大まかにいうと「意識を持ったミニ四駆が暴走する」という内容だった。

久保氏は、その映画が不振に終わった経験から、そういったストーリーを嫌ったようである。
また、第2作が第1作ほどヒットしなかったことを良しとせず、第3作の興行収入目標を第1作以上としていた。
つまり、第1作以上のクオリティの高いストーリー、『ヒットするシナリオ』を求めていた。

ティラノサウルスの摩訶不思議な話で第1作以上の作品になるかどうかは未知で、ティラノサウルスの化石復活と言うストーリーはポケモン映画でなくても書ける脚本である。
上記のようにストーリーへの反対意見に対する反論は色々用意していた首藤氏だが、「この作品は大ヒットできるの?」なんてことは微塵も考えておらず、面食らってしまい、そもそも自分のやりたいように好き勝手書いた『ミュウツー』の大ヒット自体が想定外だった首藤氏にとってまともな反論意見・ヒットさせるための考えは持ち合わせていなかった。
なので、首藤氏はあまり反論せず、最終的にプロットは却下された。

自身の想定とは別の理由で不採用となってしまった首藤氏であったが、『ヒット云々』への反論意見自体出せなかったこともあり、特に抗議などはせずに諦めて別の話を考えることにする。
とはいえ、抗議はしなかったものの却下理由にすんなり納得とはいかなかったらしく、首藤氏は却下後に酒を飲んでヤケになっていた模様。
反対されることも想定はしていたとはいえ半年かけて練り上げたものであり、多少ヤケになるのも無理のない話である。
結果的に、没プロットのテーマを発展させようとなんとか『劇場版ポケットモンスター 結晶塔の帝王 ENTEI』脚本を考えるも途中で心身の調子を崩して仕事ができなくなり、脚本の後半を園田英樹に任せた。

ちなみに、アニポケ総監督で、首藤氏と付き合いが長い湯山邦彦氏は久保氏と逆に、無機物に意識が宿ると言うストーリーを気に入っていたらしい。


ティラノサウルスの止まった場所

この没プロットにおいて、ティラノサウルスの止まった場所は明かされていない。
ウェブコラムにて没プロットの存在を明かした首藤氏であったが、この点は明らかにしなかったのである。

「『動物とはなにか?』『人間とは何か?』、その違いと共通点を考えればさほど難しくない」と氏は語ったが難しすぎるんですがそれは…
首藤氏はくも膜下出血のため2010年10月に死亡した、本人から直接聞くことはできなくなってしまった。
遺品整理や関係者の談話、あるいは資料整理などで後々明らかになる可能性も残されてはいるものの、この点は個々人の性格や様々な事情が絡むため何とも言えない。
可能性は0ではないもののあまり期待しないでおくのが無難だろう。

アニポケファンの間では様々な考察がされている。
『最初にティラノサウルスが発掘された地点』『卵』『世界の果て』などといった予想があるが、どれも今一つ決定力に欠けている。

現在でも議論されており、謎が尽きない話となっている。





追記・修正はティラノサウルスの止まった場所を考えてからお願いします。

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最終更新:2024年02月02日 00:06