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大森 広司
2017年1月30日 (月)

東京五輪のさらに後、巨大な選手村予定地のその後は何になる?

東京五輪のさらに後、巨大な選手村予定地のその後は何になる?
写真/PIXTA
豊洲新市場の問題で注目が集まる東京湾岸エリアでは、2020年東京五輪の競技場整備に向けた動きも進められている。なかでも注目されるのが、五輪後にマンションを中心とした街づくりが予定されている選手村だ。どんな街ができるのだろうか。

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タワーマンションなど約5650戸を五輪後に供給

まず選手村ができる場所だが、晴海エリアの一番西にある晴海5丁目。豊洲新市場のある豊洲ふ頭とは運河を挟んだ中央区側に位置する。計画では東京ドーム3個分にほぼ匹敵する約13万3900m2の土地に、14~18階建ての宿泊施設21棟と商業棟が整備されるという。

五輪が終わった後は宿泊施設をマンションに改修し、さらに50階建てのタワーマンション2棟を建設。合計約5650戸のマンションを供給する。

昨年3月に東京都が発表した整備計画によると、一般向けの分譲マンションだけでなく、サービス付き高齢者向け住宅や若者向けシェアハウス、外国人の利用を想定したサービスアパートメントも建てるという。商業施設のほか、クリニックモールや保育所など生活に必要な施設も整備される。

水素ステーションやエネファームで水素社会を先取り

街づくりのイメージパースを見ると、学校予定地が確保されている。居住世帯の子ども向けに小学校などがつくられるのだろう。

【画像1】東京五輪後の選手村(イメージ)(画像提供/東京都)

【画像1】東京五輪後の選手村(イメージ)(画像提供/東京都)

さらに目を引くのが水素ステーションだ。水素と酸素の化学反応で動く燃料電池自動車向けに水素を供給する施設とされている。分譲マンションの各住戸には家庭用燃料電池(エネファーム)が設置されることになっており、来るべき水素社会を先取りすることが街づくりのテーマにもなっているのだ。

運河沿いにはマンションを囲むように緑地が広がっている。いわく「港の景観を楽しむ散策路(レインボーブリッジなど)」「海を臨むカフェなどの設置」――。運河の景色が楽しめるエコ住宅に暮らしながら、燃料電池カーに乗って湾岸をドライブする、そんな暮らしがイメージできそうだ。

日本を代表するデベロッパーが街づくりに集結

都知事選を数日後に控えた2016年7月末、選手村の街づくり事業を担う特定建築者を都が発表した。その顔ぶれは三井不動産レジデンシャルを代表会社に、住友不動産、東急不動産、三菱地所レジデンスなど、主だったデベロッパーがそろう、まさにオールジャパンともいえる顔ぶれだ。

今後はこれらの特定建築者が都の土地を活用し、来年1月にも建築工事に着手していく。五輪が始まる半年前には宿泊施設などの整備を終え、大会後の改修工事を経て2024年度には事業を完了させるスケジュールになっている。

気になるのは選手村の宿泊施設をマンションに改修するという部分だ。東京 2020 オリンピック・パラリンピック招致委員会の立候補ファイルによると、宿泊施設には4人用の60m2の住戸のほか、7人用の104m2の住戸や浴室が3カ所付いた8人用の135m2の住戸などもつくられるというから、そのままでは分譲マンションとしては売りにくいだろう。かなり大がかりなリニューアル工事が必要になると思われる。

約5650戸のうち約1490戸程度は賃貸になる予定だが、残りの4000戸余りを一度に分譲すると供給過剰になることも考えられる。改修工事を進めながら数年かけて分譲していくことになりそうだ。

新市場の移転が遅れると街づくりに影響する!?

夢が広がる街づくり計画だが、ここにきて懸念材料が浮かび上がってきた。例の豊洲新市場の影響だ。新市場自体は運河の対岸なので選手村の工事には関係ないが、問題は環状2号線だ。

環状2号線は秋葉原から虎ノ門、新橋を経て選手村、豊洲新市場、有明へと至るルートとなっている。現在工事中の新橋から湾岸へのルート上には築地市場があり、市場が移転しないと工事が進まないのだ。計画では2017年11月の市場移転後に暫定開通させ、五輪までに全線開通させる予定だったが、新市場の問題で五輪に間に合うかどうか不透明な情勢となった。

都では環状2号線の全線開通に合わせてBRT(バス高速輸送システム)を運行し、都心と湾岸エリアのアクセスを改善させることを目指している(※)。晴海地区には鉄道が通っていないので、BRTが予定通り運行されるかどうかは都心への通勤利便性を大きく左右する。計画が大幅に遅れてマンションの分譲や入居に間に合わなかった場合、住戸の販売にも影響しかねないのだ。

※参考:2019年に開通決定! 都心と臨海副都心を結ぶ新交通「BRT」ってなんだ?

新市場の移転を巡って小池都知事がどのような決断を下すのか、ハラハラしながら見守っているのは築地市場関係者だけではなさそうだ。

●参考
・東京オリンピック・パラリンピック準備局/大会終了後の住宅棟モデルプラン
・東京都/東京2020大会後の選手村におけるまちづくりの整備計画について
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