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唐松 奈津子(りんかく)
2018年2月23日 (金)

SUUMO編集長的「住むのにオススメな街」3つ

写真/PIXTA
もうすぐ『住みたい街ランキング2018 関東版』が発表されるという情報を入手! 毎年、ランキングを見るたびに「住みたい街」って本当に人によって違うんだなぁ……としみじみ感じます。とすれば、SUUMOを取り仕切る編集長の池本洋一(いけもと・よういち)はどうなんだ、と気になるところ。
「僕は住まいの情報屋」と自ら全国、いえ全世界の街を巡り、住まいにかかわるありとあらゆる情報を収集している池本編集長に「個人的に」今オススメするならどこ? を聞いてきました!

都心で今、そしてこれからアツイのは「池袋」

さて、取材のために待ち合わせた「品川」も今回のこの記事で取り上げる候補エリアの1つに挙がっていた街ですが、池本編集長いわくそれを超える街が「池袋」だといいます。品川在住の筆者としては、この街が選ばれなかったことにちょっとしたジェラシーも感じつつ、その理由を聞くことにしました。

はたしてなぜ池袋!? どんな人に対して池袋押しなんでしょう?

【画像1】池本編集長(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】池本編集長(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「率直に言うと、池袋はまず、20代の女性にオススメしたい街です」(池本編集長、以下同)

え!? 女性、しかも20代ですか? 池袋といえば、結構男くさい街というイメージがあるのですが……そのココロは?

「実は、住みたい街ランキングでも、池袋は女性の得票数の多い街なんですよ。まず、ハイブランドからファストファッションまで、ありとあらゆるファッションブランドがこの街で一通り網羅できます。駅直結の西武、PARCO、東武百貨店、Echika、Esolaとファッション施設がてんこ盛り、少し離れたマルイまでも地下通路で駅から雨にぬれずに行けちゃう。ファッションの街、といえば原宿や渋谷などをイメージしますが、池袋は今のトレンドど真ん中を広く、網羅的に押さえられるショップが多くそろってるんです」
※関連記事……独身OLだった私にも優しく住みやすい街「池袋」

【画像2】池袋駅東口の風景(写真/PIXTA)

【画像2】池袋駅東口の風景(写真/PIXTA)

「それに、ビックカメラやヤマダ電機という家電量販店も充実しています。サンシャインシティの西側には、アニメイトやまんだらけをはじめとするオタク文化の聖地が広がっていて、いわば“秋葉原・中野的要素”がある。北口・東口に行けば、雑居ビルの中に昔から営業している飲食店がたくさんあって“赤羽・北千住的な要素”を感じますよね。さらに、サンシャインシティには水族館やナムコナンジャタウンなどの子どもが楽しめる場所もあり、家族で行ってもそれぞれに満喫できる場所が見つかります。

街として、複数の顔を持っていて受け皿が広い。これは多くの人にとって『居場所を見つけやすい街である』ってことが言えると思うんです。街全体がいろんな層の人を許容している雰囲気があって『懐の深さ』を感じます」

なるほど! そう言われるとたしかに子どもも大人も楽しめる場所がちゃんとありますね。筆者は、新文芸坐に映画を観に行ったりするんですが、子どもたちを連れて行くには何となく治安が良くないように思って、出かけ先の候補として避けてしまいがちでした……。

「その治安の悪いイメージもね、今、古くから池袋で商売をやっている人たちが改善しようとボランティアで地域パトロール隊を編成して活動してたりするんです。『池袋の良さ』を分かっている人たちが、その魅力をキープしてさらに進化させようとしている。

行政もそうです。南池袋公園がリニューアルして、全面芝生のきれいでオシャレな雰囲気になりましたよね。その近くには豊島区役所が移転して周辺の開発が進んでいます。北側の旧庁舎があった場所は、近くに新文芸坐のような民間の劇場も多いし、東京芸術劇場や公会堂など、もともと文化施設の多いエリア。豊島区はその一帯を『文化拠点』と位置づけて、2020年には宝塚や歌舞伎などを上演できる大型文化施設をつくる予定です。メインカルチャーとサブカルチャーがいい具合に混ざり合って、文化の多様性を大切にしながら進化しているんです」

「さらに池袋は住みやすい街でもありますよ。マンションだけでなく、雑司が谷のほうに行けば昭和の古い街並みが残っていて、一戸建ても多くある。『待機児童ゼロ』をはじめとして共働きファミリーに暮らしやすい施策も整っています。都心なのにそこそこ家賃も安くて『等身大の街』って感じがする。今、池袋に暮らしてる、って悪くないと思うんですよね」

だんだん、池袋周辺にファミリーで引越すというのも悪くない選択肢だな……と思い始めてしまいました。個人的に少し前までは池袋のような超都心エリアより、もう少し落ち着いた23区の縁側、杉並や世田谷のような場所に目が行きがちだったんですけどね。

23区の縁側なら「西荻窪」の魅力を知ってほしい

「その辺りなら今、僕は『西荻窪』をオススメします。住みたい街ランキングで上位を張り続けている吉祥寺の隣駅。僕の周りの人でも西荻窪に住んでる人、結構います。テナントの賃料なんて吉祥寺の半分くらいで借りられたりするから、出店したい人や落ち着いて住みたい人が流れてきていて、おいしくてオシャレなお店がどんどん増えてます」

ええ、筆者も何度か遊びに行ったことがありますが、古家具を扱っているお店やかわいい雑貨屋さんに加えて、オシャレなカフェやデリも、おいしく飲み食いできるお店もそろってますよね。また行きたいと思わせる街だし、行くと住みたくなります。

「そう。この街には住んでいる人か、本当に好きで来るリピーターのような人たちしかいない。『この街好き!』っていう純度がすごく高い街だと思うんです。

フランチャイズ店が極端に少なくて個人経営のお店が多いんだけど、例えばあるお店に行って店主と話すと『あそこの店も行ってごらんよ』と次の店がレコメンドされる。ここにいる人たちはみんなこの街がすごく気に入っていて、好きな者同士でその良さを共有し合おうという空気が流れている。それは住む人にとっても一緒で、一人で住んでも友達をつくりやすい街だと思うんです。こじんまりとした店で飲んで店主と話していると、隣に座っている人を紹介されたりとかね」

【画像3】西荻窪の飲み屋街(写真/PIXTA)

【画像3】西荻窪の飲み屋街(写真/PIXTA)

「昨年夏に社会デザイン研究者の三浦展(みうら・あつし)さんが自分の住んでいる西荻窪を紹介する、って記事を公開したんだけど僕もその取材に同行してたんです。あれを読んでもらえば、西荻窪の魅力は存分に分かってもらえるんじゃないかな。この街を歩いていると、ちょっとヨーロッパの街みたいだな、と思います。いや、見た目は全然ヨーロッパじゃないんだけどね(笑)。1階に店舗があって2階が住居って構造の店舗兼住宅が連なっているところが、歩いて楽しい街、住んでもいい街って感じで」

三浦さんの記事、筆者も読みました。こういう温かい空気が流れているように感じる場所って、子どもを育てるときにもいい効果があるように思いますね。一人で飲み歩くのも好きですが、二児の母としては、やはり子育て視点でも魅力を感じることのできる街だといいなと思っていて。

「教育という観点で見ると、中央線って魅力的な中学校・高校がそろっているので、将来、子どもが大きくなって中学受験するとか、高校に進学するようになったときに通いやすい立地だと思いますよ。かと言って、三鷹や吉祥寺のように学習塾が多いという印象でもない。

西荻窪は古家具屋さんや古本屋さんなんかもたくさんあって、古くていい物を長く大事にしようって感覚が住む人たちの中に共通してあるように感じます。お祭りや地域のイベントもたくさんあるから地域の人との交流も多く、子どもたちが街と一緒に育ってくイメージが湧くんですよね」

なるほど、池袋でも出てきた「街としての懐の広さ」みたいなものは、この街にも感じますね。ほかにも「子育て」という側面でオススメの街ってありますか?

子育て世代にオススメしたい郊外の街は「多摩センター」

「SUUMOでも今年のキーワードとして『育住近接』を掲げてるんですが、今回オススメする多摩センターは、30年くらい前に一世を風靡(ふうび)した計画都市『多摩ニュータウン』の中心地。莫大(ばくだい)なコストをかけて開発・整備された街です。幼稚園、保育園、小・中学校が等分配置されているから、どこに住んでもある程度アクセスしやすい場所に園や学校があるんですよ」

多摩センターですか! 子育て真っ最中の身からすると「親世代が憧れた住宅地」として何となく見聞きしてはいても、何だか一昔前の家族像が投影された街のよう。正直魅力を感じづらいのですが……。

「ですよね。みんなが都心を向いて一生懸命な今だからこそ、あえてオススメしたいんです。郊外と言われる場所は賃料に割安感があるし、昔ファミリー視点で徹底的に開発されたこの街は、本来すごく『子育てしやすい』場所なんです。

例えば、多摩センター駅から伸びるペデストリアンデッキ(建物と接続して建設された、広場と横断歩道橋の両機能を持つ歩行者専用の高架建築物)は、日本でも有数の広さで、歩くとすごく気持ちがいいですよ。完全に歩道と車道が分かれており、緑がその間に配された道路はアメリカの計画都市のようです。安心・安全に、スピーディーに子どもの送り迎えが可能な毎日をイメージできるでしょう」

【画像4】多摩センター駅前に伸びるペデストリアンデッキ(写真/PIXTA)

【画像4】多摩センター駅前に伸びるペデストリアンデッキ(写真/PIXTA)

でも、郊外に住むとなると、やっぱり生活利便性が落ちてしまうんだろうと思って、なかなか都心の生活を手放せずにいます。育児と仕事の両立においては、やはり通勤時間がかかるのも負担に感じますしね……。

「そう、交通アクセスがずっとネックだったんですけど、朗報があってね。この3月から小田急線の複々線化が完了して、多摩センターから新宿へのアクセスが最速で33分、朝のラッシュ時で40分と最大14分も短縮されるんですよ。しかも、これまで急行は新百合ヶ丘で乗り換えが必要だったんだけど、多摩センターから新宿へ直通の『通勤急行』『急行』が新設されて、多摩センターが始発のものもできる。座って乗ることができれば、通勤への負担感もずっと軽減されるでしょう?」

「それに駅前にはショッピング施設が多数あって、ユニクロやニトリ、電気量販店など生活に必要なものがそろう『ナショナルチェーン店の天国』と言ってもいいくらい。2駅先には南大沢の三井アウトレットパークがあって、商業的にすごく充実した立地なんですよ。一方で、聖蹟桜ヶ丘のほうに行けば多摩川が流れていて、大きな公園があって……と自然にあふれてる。

教育環境、日用品が買える店舗群、大規模ショッピングセンター、毎日使える公園、ちょっと遠出すれば山や川など自然……郊外の生活にあったらいいなと思うものがそろってるんです。もし郊外も検討に入れるんだったら、いっそ思い切ってここに住んでみたら? と子育て世代に提案したい街です」

なるほど! 納得です。今回、池本編集長に紹介してもらった3つの街は、どれも「やんわりと私たちを受け入れて、居心地のいい場所を与えてくれそうな街」という印象。今年の住みたい街ランキングがどんなラインナップになるのか楽しみですが、人気の街に限らず、ちょっと目線を広げた街選びと住まい探しで、理想の環境を手に入れたいものですね。

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