借りる   |   住まいの雑学
Kondo
近藤智子
2018年3月16日 (金)

お墓の近くの物件って、実際どうなの?

実際どうなの? お墓の隣の物件のメリットデメリット
画像/PIXTA
もうすぐ春のお彼岸。「お墓」「墓地」「霊園」……これらの言葉に、どのようなイメージをおもちですか? 「特になんとも思わない」「供養のための大切な場所」と思う人がいる一方、「ちょっと怖いな」というイメージをおもちの方もいるようです。物件探しの際にお墓近くの物件を紹介されたら、あなたはどうしますか? 今回は、墓地の近くに住むことについてお伝えします。

お墓は怖くない? 火の玉とか出ない!?

ある時、「お墓近くの物件は怖そう」と都市部に育った筆者が言うと、友人に不思議そうな顔をされました。筆者の家のお墓は、少し郊外の霊園の一角にあり、非日常を感じる場所です。一方、友人の家のお墓は隣接するお寺の中にあるものだから、日常の風景に過ぎないとのこと。

「火の玉とか出るんじゃないの?」と筆者が聞くと「最近は火葬だから出ないよ」と笑われ、一蹴されてしまいました(火の玉は、土葬された遺体の中にあるリンが化学反応を起こすことで発生するといわれています)。でも墓地近くに住むって、実際のところはどんな感じなのでしょう……。そこで、不動産のプロにお話を伺うため「アパマンショップ自由が丘店」を訪問しました。

墓地近くの物件について教えてくださったのは、アパマンショップ自由が丘店を運営する株式会社アップルグループのアップル東京株式会社 執行役員の片岡潤(かたおか・じゅん)さん。実は片岡さん自身がお寺や神社に囲まれた下町の地域で育ったという、不動産のプロでありながら、墓地近くで暮らすことに慣れている「プロ」でもありました。

風通しよく、日当たり良好な物件も

「自由が丘近辺、それから目黒や西大井にかけては歴史的な経緯からお寺が多く、墓地も多い地域ですが、それほど家賃を下げなくても借りる方が多いですね。お寺や墓地が近いというよりも、物件の内容、スペックのほうを重視される方がほとんどです」(片岡さん)

意外にも墓地の近くの物件を気にする方は少ないということで、気にしていた自分が少し恥ずかしいような……。店舗で物件の内容(広さや設備など)を確認して気に入ったのであれば、墓地のことはさておいて、実際に現地に行って内見する方がほとんどとのこと。

「お墓や、墓地のあるお寺のそばにある物件は、日当たりや風通しなどがよい場合が多いです。ですから、迷っていても、見に行って『ここに決めよう』という方もいらっしゃいます。まわりが静かですから、そういった意味では住みやすいと思いますよ。お墓の場合は近いといっても、塀や道で隔てられているのでそれなりの距離が保たれています」(片岡さん)

卒塔婆のクローズアップ(画像/PIXTA)

卒塔婆のクローズアップ(画像/PIXTA)

墓地が近いことをもし大家さんがマイナスに感じている場合、家賃や敷金・礼金を割安に設定することがあります。これは借り手としてはうれしいポイントです。これらお金の面に加え、設備などを充実させて部屋のスペックを高くすることで好条件にし、借り手に「この物件がいいな」と思わせる工夫をしている物件もあるそうです。

実は静かで住みやすい?

「日当たりがよくて静かな墓地近くの物件は、気に入って住み続ける方が多くいらっしゃいます」(片岡さん)。入居者は単身者や家族など、エリアによってさまざま。ただ片岡さんいわく、デメリットは、どうしても周辺の夜道が暗めになってしまうこと。そのため、女性よりも男性の入居者の方が多いのだとか。

前述の筆者の友人は、「お盆にはお参りの人たちがたくさんやってくる」と言っていました。そのあたりはどうなのでしょうか。

「お盆やお彼岸には確かにたくさんの方がお越しになりますが、うるさすぎるという苦情を受けたことはないですね。その時期がそういうものでしかたないという認識もありますし、そもそも単身者の方は、自分も帰省などで留守にしていることが多いためでしょう」(片岡さん)

鐘楼(画像/PIXTA)

鐘楼(画像/PIXTA)

音で言えば、お寺なら朝晩鐘の音がします。筆者も以前住んでいた物件で、朝晩お寺の鐘の音が聞こえてくるところがありました。定刻に鳴る音は規則正しい生活を促しますし、風情があってそれはそれでよいかもしれませんね。

「個人的には、ここ10数年くらいの間に、お墓を気にしない人がさらに増えたように感じています。駐車場があって1日中音が絶えず、夜中も皓皓(こうこう)と明るいコンビニなどや、救急病院の近く、あるいは大通り沿いや線路沿いよりも、墓地の近くのほうが、個人的には住みやすいと感じます」(片岡さん)

お墓をどのようなものとしてとらえているかには個人差がありますが、「なんだか怖そうだなー」と敬遠していた筆者も、お話を聞いて「なるほど!」と思わせられました。

日当たりがよく、静かで、スペックや家賃に恵まれていることもある墓地近くの物件。これから家探しをする方は、ぜひ候補に入れて考えてみてください。南無。

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