ソニー「100万円ブラビア」は、何を狙うのか 平井一夫社長が語るエレキ事業の未来

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ドイツ・ベルリンで取材に応じる平井一夫代社長兼CEO(著者撮影)
ドイツ・ベルリンで9月2日から開催されている世界最大級の家電ショー「IFA 2016」。前日に高級オーディオ製品などを発表、展示会場でもテレビ、オーディオ、カメラと高付加価値製品に特化した製品展示をしているソニーの平井一夫CEO兼社長が報道陣の取材に応じ、ソニーの収益の回復著しいエレクトロニクス事業について質問に答えた。
質疑に先立って平井氏は「感性の領域に踏み込むことで、家電製品の差異化を突きつめた製品作り展示を心がけた」と、今回のIFAにおけるコンセプトについて語った。昨今、同氏が繰り返し使っている“ラストワンインチ”に対する取り組みである。

「感性に訴える部分」で勝負するソニー

――IFA直前に発表されたブラビアZ9Dシリーズ、それに今回発表された高級ヘッドフォンオーディオ製品群、それにαやRXシリーズなど高付加価値製品に絞り込んで製品展開を行うカメラ製品の一部には、一般的なメーカーの常識からすると、際立って高価格帯の製品に力を入れているように見えました。これこそが“ラストワンインチ”を演出しているのでしょう。しかし、一方で販売数には限界もあります。こうした高価格帯の製品は、直接的あるいはブランドに対する間接的な部分で、どのぐらい企業価値向上に貢献すると考えていますか。

ここ数年、価格も性能も上のほうを狙った製品に注力してきました。マーケットの状況を見ると、機能と価格だけで争う市場はソニーの土俵ではありません。われわれは感性に訴える部分で勝負しなければなりません。

以前にもお話ししましたが、時計は“時間を知る”機能しかないのに、そこに数1000円しか払わない顧客もいれば、100万円を惜しまない顧客もいます。われわれが機能で勝負するわけでない……と話しているのは、そうした部分です。事業収支に関しても、低価格帯で製品を展開しても大量に製品は売れるかもしれないが、そこで利益は出ない。台数を販売しても利益が出ないため、高付加価値に行かざるを得ないという面もあります。

――新型ブラビアの100インチモデルは、確かに素晴らしい画質ですが700万円です。どのような形でソニーのエレクトロニクス事業に貢献することを期待しているのでしょうか。

高付加価値路線に集中し、シェアを取るために収益が取れない領域にまで手を伸ばすのはやめようというのが、われわれの基本的な考え方で、これによって黒字化を達成してきました。

ご指摘の700万円のブラビア、あるいは超単焦点型プロジェクターも500万円で販売させて頂いていますが、これらはB2C向けでそれほど多くの商品が売れるわけではありません。しかし、ソニーのブランド価値を高める効果……いわゆる英語で言うところ“Halo Effect”(後光効果)が期待できますし、ソニーが持っている技術力を広く一般に訴求できるという意味で、間接的な部分での貢献が多い商品です。富裕層に向けて、ソニー製品の価値を高めてくれます。

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