家計調査16年1月~個人消費は底這い圏の推移が続く

2016年03月01日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.5ヵ月連続の減少

総務省が3月1日に公表した家計調査によると、16年1月の実質消費支出は前年比▲3.1%(12月:同▲4.4%)と5ヵ月連続の減少となり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲2.7%、当社予想も同▲2.7%)を若干下回る結果となった。前月比では▲0.6%(1月:同1.0%)と2ヵ月ぶりの減少となった。
月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比▲2.8%(12月:同▲4.3%)、前月比▲0.2%(12月:同0.6%)となった。
実質消費支出の動きを項目別に見ると、家具・家事用品(前年比4.8%)、食料(前年比2.9%)は増加したが、被服及び履物(前年比▲5.9%)、光熱・水道(前年比▲10.7%)が大幅に減少するなど、10項目中6項目が減少(4項目が増加)した。月前半の気温が高めだったことを反映し、冬物衣料、電気代、ガス代、灯油の落ち込みが特に大きかった。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比0.2%と2ヵ月ぶりに上昇したが、前月に同▲1.7%と大きく落ち込んだことを踏まえれば、戻りは非常に弱い。16年1月の水準は前期比▲2.2%と急速に落ち込んだ10-12月期平均をさらに▲0.9%下回っている。

2.1月の消費関連指標はまだら模様

家計調査以外の1月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の小売販売額は前年比▲0.1%(12月:同▲1.1%)、前月比▲1.1%(12月:同▲0.3%)といずれも3ヵ月連続で減少し、百貨店売上高は訪日外国人向けの売上増は続いているものの冬物衣料の不振が続いていることなどから前年比▲1.9%(店舗調整済)と2ヵ月ぶりのマイナスとなった。
一方、鉱工業指数の消費財出荷指数は15年10-12月期の前期比0.9%の後、16年1月は前月比3.3%と強めの結果となった。また、外食産業売上高は土日・祝日数が前年よりも少なかった15年11月を除いて15年7月から前年比で増加を続けており、1月は客数、客単価ともに前年比でプラスとなったことから、前年比5.3%と高めの伸びとなった。1月の個人消費は統計によってばらつきがあるが、総じてみれば昨年末にかけての大幅な落ち込みを取り戻しておらず、個人消費は底這いの推移が続いていると判断される。
先行きについては、原油価格急落に伴う消費者物価の低下が実質所得を押し上げ、個人消費の持ち直しに寄与することが見込まれる。ただし、物価上昇率の低下や景気の先行き不透明感などから、春闘賃上げ率は前年度を下回る公算が大きく、名目賃金の伸び悩みは16年度入り後も続くことが予想される。このため、原油価格下落の影響一巡などから物価が再び上昇した場合には、実質所得の低下を通じて個人消費が下振れするリスクが高まるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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