4月の消費税増税に向けて、うっかりやってはいけないこと、したほうがいいこととは? 生活者目線のアドバイスで人気の経済ジャーナリスト、荻原博子さんに具体的なテクニックを聞いた!
消費税で二極化する女性たちの生活
―消費税増税は女性の生活にどう影響してくるのでしょうか? “影響する”というより“のしかかってくる”と言えると思うのですが……。
実際、“のしかかって”きます。なぜなら、給料は上がっていないから。毎月勤労統計という厚生労働省が出している統計があるのですが、ボーナスや残業代は増えていますが、基本給の平均はこの10月までに、17ヶ月連続下がり続けているんです。その中、増税がありモノの価格が上がって、社会保険料も上がるので結構厳しいですよね。今までのような生活をしていると苦しくなります。生活をスリムにしなければいけない。みんながそうしなければいけないとなると、消費は減り、デフレは脱却できないでしょう。みんながモノを買わなければ脱却できないわけですから。
良くなるのは大手の輸出業者くらい。逆に海外からモノを買って国内で販売している人たちは、円安のおかげで買ってくるモノは高くなるわ、消費税は上がるわで大変です。そういう人たちの給料は下がるでしょう。二極化するというのはそういうことです。
今の政策は二極化する政策です。いい人はすごく良くなりますが、大部分の人は苦しくなる政策で、この先も格差が広がるでしょうね。
住宅、車、家電……すべての購入はむしろ4月を待ってから
それから住宅購入。今、どうしようかとか考えている人は、4月過ぎてから考えたほうがいい。新築に関して言えば、2013年9月末までに契約をして、2014年4月以降引渡しという人は、消費税は5%のままです。でも2013年10月以降に契約したらもう8%。もう遅い。しかも、4月になると住宅ローン控除が増えます。これまではローンのうち最高2000万円までが控除になり、1%つまり年間20万円が戻ってきて、それが10年間続く。4月になるとローン控除対象が4000万円まで引き上げられます。なので、ある程度余裕のある人は、4月以降に買ったほうが、どんどん税金が戻ってくるのでお得。そして収入がない人に関しては、4月以降補助金が出ます。最高30万円。
年収500万円ぐらいの(どちらにも当てはまらない)人は、悩ましいですが、4月になると、通年ある3月くらいまでの不動産の需要期から外れ、業者が弱気になるので安くなります。2014年は、消費税前の需要期なので、いつもより更に強気になるでしょう。なので、全然迷う必要はありません。
中古住宅は個人間売買なので、消費税はかかりません。ただ、不動産の仲介料は3%上がります。けれど、100万の仲介料でも増えるのは3万円です。「おじさん、まけてよ」と言えばまけてくれますよ(笑)。家は出会いだから、いい物件が出てきたら買ってもいいですが、焦る必要はまったくありません。消費税のために住宅を買うなんていうのはバカなことです。
車に関しても、自動車取得税がなくなるので、消費税が上がってもそんなに気にするほどの値上がりではありません。家具も値上げしないと大手が言っているので、業界的にそんなに上がらないででしょう。家電も、4月はリニューアル時期でモデルチェンジします。その時期は型落ち商品が出てくるわけですが、型落ちの値引きといったら、消費税値上げ額どころの話ではありません。消費税値上げ前の購入より型落ち狙いの方がよっぽどお得。
その購入、待った! 消費税のために家を買うなんて、ダメ、絶対!
消費税アップ前後、やるべきことは現金確保!
―逆にしたほうがいいことは?
家計の見直し。貯金。端的に言えば、「借金減らして、現金増やす!」。デフレの中で借金をするということは、相対的に借金は増える。なぜかというと、例えば住宅ローンを毎月10万円払っていたとします。給料が月30万円。この場合33%がローン。でも、デフレでは給料が下がることが多い。例えば極端な話、給料が月20万円になったらそのローンは(月給に対し)50%になるわけです。相対的にローンは増えてしまう。
逆に、デフレの中の現金は価値が上がる。というのは去年¥10,000(の価値)だったものが、今年は¥9,500(の価値)になる。モノ(それ自体)が安くなっていくのがデフレですから。一万円札だして終わりだったものが、今年は¥500のお釣りが来る。ということは、1年間に5%の金利が付いたのと同じこと。だから、見かけ上は現在ほぼ0金利で、お金を持っていてもしょうがないと思えるかもしれませんが、お金の価値そのものは上がっている。なるべく借金返して、現金増やす。これがデフレの中の鉄則です。ローン、キャッシング、そしてボーナス払い、リボルビング払いもものすごい借金なので、なるべくやめた方がいいです。後から(負担が)きます。
なるべく無駄なお金は使わないほうがいいです。現金をしっかり持っていましょう。よく「インフレになるから現金持っていても意味がない」という人もいますが、まだインフレになっていませんから。日銀がデフレ脱却宣言をしたら「あ、デフレ脱却したんだな」と思えますが、まだしていませんからね。その中では投資より、現金を持っていたほうがいい。インフレの対策は、インフレになってからでいい。お金以外のものに換えて他のモノを持っていこうという対策ですが、モノの価値が下がって、お金の価値が上がっているときにそれをやると、そのモノが将来どうなるかわからないわけですから。
消費税増税前に買っておいてお得なものといえば、定期券くらいじゃないですかね。半年定期を3月前に買っておいたほうがいい。そのくらいです。
money, money, money! 現金こそ命?
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モノの値段に惑わされるより、気にするべきは“雇用“!
―値段の表示も気を付けないとと思います。どの価格が支払う値段なのか、わかりにくくなりそうです。
表示もバラバラになるらしいですからね。でも、それに気を遣うのではなく、使うお金を決めて、それ以上は絶対に払わないようにすればいい。食費を¥40,000と決めたらそれ以上使わない。そのために、例えば月¥10,000を“主食”として取っておく。残り¥30,000ですよね。そうしたらそれを全部千円札にするんです。そして1日千円札1枚だけ財布に入れて、買い物に行く。そうすれば余計な買い物をしません。消費税うんぬんよりも、使うお金を決めて、その中で収めれば足りなくならないわけですから。
そうすれば自然と生活のスリム化になります。一万円札を財布に入れない! 一万円札があるとお酒飲んで、タバコ買って……となりますが、千円しかなかったら、「3日後に宴会があるから貯めておかないと……」となる。自分に“枠”をつけることです。
消費税を価格に加えられるのは、(企業のうち)4割くらいというアンケートがあります。皆さんに改めて知っておいていただきたいのは、“消費税の納付義務は事業者にしかない”ということです。モノの値段が上がることを心配している人が多いですが、それよりも心配なのは雇用です。消費税後も値上げをしないと決めた企業は、今までより多くの消費税を収めるため、利益が減ります。その分、給料を下げるという話になったらマズいです。そのような企業にお勤めの方は、気をつけがほうがいい。
―だからこそ、今、給料が下がる可能性が高い転職はしないほうがいいということですね。納得しました。
INFORMATION
Photo : Osamu Kurihara(4×5)
荻原博子(おぎわら・ひろこ):
(プロフィール)
荻原博子(おぎわらひろこ):1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手が、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。
バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。現在、「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日・水曜コメンテーター)をはじめ、新聞、雑誌等の連載も多数手がける。また、「金持ち老後、貧乏老後」(毎日新聞社)など著書多数。