相続手続きの流れと期限(一覧表つき)
家族が亡くなってからやらなければならない手続きは、大きく次の3つに分けられます。
- すぐにやるべき手続き(死亡届の提出など)
- 相続手続き
- 税金の手続き
これらの手続きの中には、期限があるものがあります。
手続き | 期限 |
---|---|
死亡届の提出 | 被相続人(亡くなった方)が死亡したことを知った日から7日以内 |
火葬許可申請書の提出 | 被相続人が死亡したことを知った日から7日以内 |
世帯主変更届の提出 | 世帯主が変わった日から14日以内 |
葬儀 | - |
遺言書を探す | - |
遺言書の検認 | - |
遺言書の有効性の確認 | - |
相続人の調査 | - |
財産の調査 | - |
相続放棄 | 被相続人が死亡したことと、その相続において自分が相続人となったことを知ったときから3か月以内 |
(遺言書がない場合)遺産分割協議 | - |
財産の名義変更 | - |
相続税の申告・納付 | 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内 |
すぐにやらなければいけない手続き
死亡届を提出する
被相続人が亡くなって、すぐにやらなければならないことは、市区町村の役所に「死亡届」を出すことです。 死亡届は、死亡したことを知った日から7日以内、国外で死亡した場合は、そのことを知ってから3か月以内に提出する必要があります。 死亡届を提出できるのは、被相続人の親族や同居していた人などです。被相続人が死亡した住所か本籍がある住所、または死亡届を出す人の住所、いずれかの市区町村の役所に提出しましょう。 死亡届は、次の書類と一緒に提出しましょう。
- 死亡診断書・死亡検案書
- 火葬許可申請書
死亡診断書・死亡検案書とは、死亡を証明するために医師により発行される書類のことです。家族が亡くなったことが確認されると、医師から交付されます。 火葬許可申請書とは、市区町村長から火葬の許可を得るために役所に提出する書類です。火葬許可申請書を提出すると、火葬許可証が交付され、葬儀ができるようになります。
被相続人が世帯主だった場合、世帯主変更届を提出する
世帯主変更届は、被相続人が世帯主だった場合に、住民票上の世帯主を変更するために役所に提出する書類です。 次の場合には、世帯主変更届の提出は不要です。
- 被相続人が世帯主ではなかった場合
- 世帯の中で残された人が1人だけの場合
- 新しい世帯主が明らかな場合(残された家族が妻と幼い子というような場合)
世帯主変更届を提出する期限は、世帯主が変わった日(世帯主が亡くなった日)から14日以内です。 世帯主変更届も、死亡届と一緒に提出すると、手続きがスムーズです。
死亡届や世帯主変更届の入手場所や提出方法まとめ
死亡届や世帯主変更届の入手場所や提出方法などは、以下の表のとおりです。
提出書類 | 死亡届 | 火葬許可申請書 | 世帯主変更届 (住民異動届) |
---|---|---|---|
入手する場所 | 死亡診断書・死体検案書の用紙の左側が死亡届になっている。 | 死亡届を提出する市区町村役場 | 故人が住んでいた市区町村役場 |
提出する場所 | 次のうちどれかの市区町村役場
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死亡届と同じ | 故人が住んでいた市区町村役場 |
提出する人 | 親族、同居者、家主・地主など、成年後見人など | 死亡届と同じ | 新世帯主または同一世帯の人 |
提出する期限 | 死亡したことを知った日から7日以内 (国外で死亡した場合には3ヶ月以内) |
死亡届と同じ | 世帯主が変わった日から14日以内 |
手数料 | なし | 申請時に火葬場の使用料を支払う場合がある。 | なし |
持ち物 |
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ポイント | 火葬許可申請書と一緒に提出する。 | 死亡届と一緒に提出する。 |
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死亡届を提出したら、葬儀を執り行う
死亡届を役所に提出すると、火葬許可証がもらえるので、葬儀を行うことができます。 葬儀の手続きは、葬儀会社と打ち合わせをして進めていきます。葬儀会社は病院が紹介してくれることもあります。 葬儀に関して問題になるのは、葬儀費用をどのように用意するかについてです。 遺産となる預金から葬儀費用を引き出そうとしても、銀行口座が凍結されていて引き出せない場合があります。 また、預金を引き出すことができた場合には、あとあと相続放棄ができなくなる可能性があるので、注意が必要です。
相続手続きの流れと必要書類、費用
相続は、簡単に言えば被相続人の遺産を受け継ぐ手続きです。手続きを自分で行う場合の進め方や、必要書類について解説します。
遺言書を探す
相続手続きは、遺言書があるかどうかで大きく異なります。まずは、遺言書を探しましょう。遺言にはいくつかの形式がありますが、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が多く使われています。 自筆証書遺言とは、文字通り手書きでつくった遺言書です。手軽につくることができますが、法律で定められた形式にしたがって作成されていないと無効になってしまいます。 公正証書遺言とは、遺言を残したい人が、公証役場で公証人(元裁判官・弁護士など法律の専門家)に遺言の内容を伝えて、それをもとに公証人がまとめたものです。 公正証書遺言があるかどうかは、公証役場に検索してもらうことができます。検索を依頼するときは、次の書類が必要です。
- 被相続人が死亡したという事実・被相続人と自分との関係を示す戸籍謄本
- 運転免許証など顔写真がついた身分証
自筆証書遺言が見つかったら「検認」をする
遺言書が見つかった場合には、基本的には遺言書の内容に従って手続きを進めていきます。 ただし、見つかった遺言書が「自筆証書遺言」の場合、すぐに遺言書を開封してはいけません。原則として、家庭裁判所の「検認」という手続きを受ける必要があります。 検認とは、家庭裁判所に遺言の形式・内容などを確認してもらう手続きです。検認をすることで、遺言書があることや遺言書の内容を相続人に知らせることができます。また、検認をした当時の遺言書の状態や内容を確認することで、遺言書の偽造などを防ぐことができます。 検認を申し立てる場所は、被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所です。 申立てには費用がかかります。遺言書1通につき800円の収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要です。郵便切手の金額は申し立てる家庭裁判所に確認をしてください。 申立てに必要な書類は、次のとおりです。もし申し立てる前に入手できない書類がある場合には、申立て後に追加で提出することもできます。
- 申立書
- 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍一式
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人となるはずだった人の中に被相続人よりも先に亡くなっている人がいる場合には、その人の出生時から死亡時までの戸籍一式
遺言書が有効かどうかを確認する
検認をすることで、遺言書の内容を確認できますが、遺言書が法的に有効か無効を判断することはできません。 別途、遺言書が有効かどうかを確認する必要があります。
相続人を確認する
遺言で相続人が誰か指定されている場合でも、法定相続人に遺留分が認められるケースがあります。 あとになってトラブルにならないよう、相続人が誰なのかということを事前にしっかり確認しておきましょう。 遺言書がない場合、誰が遺産を受け継ぐのかが法律で決められています。「法定相続人」といいます。誰が相続人になるかによって、遺産の割合(「相続分」といいます。)が異なります。
遺産を調べる
相続人を確認するのと併行して、どのような遺産があるのかを調べます。通常は自宅の金庫や棚などを探して、通帳や契約書、郵便物などから、遺産を調べていきます。 調べた遺産は、あとで遺産分割協議をするときにわかりやすいように一覧表にまとめます。 相続では、借金などのマイナスの財産も受け継ぎます。どのような借金がいくら残っているのか確認しましょう。
相続放棄をするかどうか考える
財産を調べてみたら、預貯金などがほとんどなく借金ばかりだった…。そんなケースで「相続したくない」という方は、「相続放棄」という選択肢があります。 相続放棄とは、その名のとおり相続する権利を放棄する手続きです。「プラスの財産だけ相続して、マイナスの財産は放棄する」といったことはできません。 相続放棄は、「自己のために相続の開始を知ったとき」(被相続人が亡くなったことと、その相続において自分が相続人となったことを知ったとき)から3か月以内という期限があります。
3か月以内に遺言書や遺産の調査が終わらず、相続放棄をするかどうか決められない場合には、裁判所に申し立てることによって期限を延長できる場合があります。
遺言の内容を実行してくれる「遺言執行者」とは
遺言書の有効性に問題がなく、相続放棄もしない場合には、遺言書のとおりに遺産を受け継ぐことになります。 遺言の内容にしたがって財産を分けるには、被相続人の銀行口座から相続人の口座にお金を移したり、不動産の登記名義を変えるなど、さまざまな手続きをする必要があります。手続きには手間がかかり、法律の知識が必要になることも少なくありません。 そんな複雑な相続の手続きをスムーズに進めるために、弁護士や司法書士などの専門家を「遺言執行者」に選任できます。 遺言執行者は、相続人の代わりに預金の名義や不動産の登記を変更するなど、遺言に書いてあることを実行するための手続きをしてくれます。 遺言執行者は、被相続人があらかじめ遺言で指定できます。指定がなければ、家庭裁判所にふさわしい人を選んでもらうこともできます。 遺言の内容を執行するために必ず遺言執行者が必要になるわけではありませんが、遺言執行者でなければできない手続きもあります。
遺言書がない場合、遺産分割協議を行う
有効な遺言書が存在する場合は、基本的には遺言の内容にしたがって相続人の間で遺産を分けることになりますが、遺言が存在しない場合には、相続人同士の話し合いで、遺産をどう分けるかを決めます。この話し合いを、遺産分割協議といいます。 法定相続分のとおりに分けてもよいですし、相続人全員が合意をすれば、法定相続分とは違う割合で分けることもできます。
協議がまとまらなければ、遺産分割調停・審判へ
財産の分け方について、話し合いではまとまらない場合、家庭裁判所での「調停」か「審判」という手続きを利用できます。 調停では、裁判官と専門知識がある調停委員が間にはいり、対立している相続人の言い分をそれぞれ聞いた上で、客観的で公平な観点から財産の分け方についてアドバイスをしてくれます。 調停はあくまで話し合いでの解決をめざす制度なので、調停委員の示す遺産分割案に相続人が一人でも反対した場合は、調停は不調に終わります。 その場合、原則として手続きは審判に移り、裁判所にどのように遺産分割するか決定してもらうことになります。 遺産分割調停は、相手方となる相続人いずれか一人の住所地を担当する家庭裁判所に申し立てます。自分の住所地を担当する家庭裁判所には申し立てることはできません。 申立てには、主に以下の書類を提出します。
- 申立書(申立人を除く相続人の人数分の写しも)
- 1200円分の収入印紙
- 連絡用の郵便切手
- 被相続人の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍附票
- 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し、残高証明書、有価証券写しなど)
遺産分割協議が話し合いまとまった場合は、遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書を作成する際の注意点は以下の記事にまとめられています。
遺産の分け方が決まったら
遺産分割協議で遺産の分け方が決まったら、遺産を受け継ぐ手続きをします。土地や家の名義変更をするための登記や、預金の払戻しといった手続きです。
登記には登録免許税や戸籍謄本取得の費用が発生
土地や家の登記には、登録免許税という費用がかかります。 登録免許税とは、登記を申請するときに国に納める税金です。金額は、不動産価格(課税価格)に税率(0.4%)をかけて算出します。 また、登記には、遺言書や検認証明書、亡くなった人と相続人それぞれの戸籍謄本などの書類が必要です。書類の取得にも費用がかかる場合があります。たとえば、戸籍謄本の取得には1通あたり450円の手数料がかかります。
銀行などでの預金の払い戻しには「相続手続依頼書」が必要
相続手続依頼書とは、亡くなった人の預金や貯金をしていた銀行などの金融機関に対して、その預貯金を受け継ぐ権利をもつ人が、預貯金の払戻しなどの手続きを依頼するための書類です。 書式は各金融機関で指定されたものを使いましょう。
相続税の手続き
相続で遺産を受け継ぐと、相続税が発生する可能性があります。 ただし、すべての人が相続税を払うわけではありません。
相続税を払わなくてよい場合
相続税を払わなくてよい場合とは、簡単にいうと、遺産の合計額が基礎控除額より少ない場合です。 遺産の合計額は、預金や土地などの評価額の合計から、債務や葬儀費用の金額を引いた額です。 基礎控除額の計算方法は、次のとおりです。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
これを表にすると、次のようになります。
法定相続人の数 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3600万円 |
2人 | 4200万円 |
3人 | 4800万円 |
4人 | 5400万円 |
5人 | 6000万円 |
法定相続では、被相続人の配偶者(夫・妻)は必ず相続人になります。さらに子どもがいる場合には、子どもも相続人になります。 子どもがいない場合には、被相続人の親が相続人になります。 子どもも親もいない場合には、被相続人の兄弟が相続人になります。 たとえば、法定相続人が妻と子の2人の場合、基礎控除額は4200万円です。この場合、遺産の合計額が4200万円より少なければ、相続税を払う必要はありません。
相続税を払う必要がある場合
遺産の合計額が基礎控除額より多く、相続税を支払う必要がある場合、期限に注意が必要です。相続税は、相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったこと)を知った日の翌日から10か月以内に申告と納付を行わなければなりません。
自分でできる?複雑な手続きは専門家に代行を依頼したほうがよい場合も
ここまで見てきたように、相続の手続きは多岐に渡ります。たくさんの書類を集めなければならない手続きや、法律や税金の知識が必要な手続きも少なくありません。 自分で手続きを行うことが難しいと感じた場合は、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に手続きの代行を頼むことを検討しましょう。費用はかかりますが、自力で行うよりも、手間をかけずスムーズに手続きを完了できるでしょう。 弁護士は、相続の複雑な調査や手続きの代行、代理人として他の相続人と交渉してもらうなど、相続に関して多くのことをを依頼できます。特に、相続人間での話し合いや調停や審判など裁判所での手続きにおいて、代理人になれるのは弁護士だけです。 相続人間での話し合いが難航する可能性がある場合、早い段階から弁護士に相談や依頼をしておくとよいでしょう。自分の代わりに他の相続人と交渉してもらえますし、調停や審判に発展したとしても、そのまま代理人としてサポートしてもらえるというメリットがあります。
相談者の疑問
相続登記についてお尋ねしたいことがあります。親が亡くなり、親名義の土地と建物を子ども名義に変える時の相続登記を自分で行おうと思っています。
相続人全員で法務局に行って手続きをするのでしょうか?必要書類なども教えていただけるとありがたいです。
弁護士の回答鈴木 克巳弁護士
相続登記手続は、3種類あります。
①遺産分割協議に基づく相続登記⇒共同申請
②遺言に基づく相続登記⇒単独申請
③法定相続分に基づく相続登記⇒単独申請
①の遺産分割協議に基づく相続登記は、相続人全員が共同で申請しなければなりませんが、必要書類さえ整っていれば、別に相続人全員が法務局に行く必要はありませんし、誰も行かずに郵送でも手続が可能です(もちろん、1人の人に対する他の人の委任状などは全く不要です)。
被相続人が生まれたから亡くなるまでの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)と相続人全員の戸籍謄本は必須です。また、所有者・共有者になる人(相続取得する人)の住所証明書(住民票など)や当該不動産の固定資産評価証明書も必要です。
もちろん、登記申請書や登録免許税の印紙等も用意することになります。
その他、①遺産分割協議に基づく相続登記の場合は、遺産分割協議書(相続人全員が署名し実印を捺印したもの)と相続人全員の印鑑証明書が必要です。
②遺言に基づく相続登記の場合は、遺言書が必要です。
③法定相続分に基づく相続登記の場合は、その他必要なものはありません。
手続きの詳細は、管轄法務局にお問い合わせなされるべきです。費用は多少かかりますが、司法書士に任せてしまうのが一番楽ですが。
各専門家に代行を依頼できることについて詳しく知りたい方は、「次はこの記事をチェックしましょう」にある記事を参考にしてください。
まとめ
「相続が発生したが、手続きを自分でする時間がない」「財産の分け方について、相続人間で意見が対立している」など、相続に関する悩みを抱えている方は、弁護士への依頼を検討しましょう。 弁護士に依頼することで、他の相続人との交渉をはじめ、様々な手続きを代わりにおこなってもらうことができます。不動産などそのままでは分けられない財産や借金があるような場合も、個別のケースに応じた適切な対処法を示してもらいながら手続きを進めることができます。 相続案件に注力する弁護士のサポートを受けることで、自分一人で奮闘するよりも手間やストレスをかけずに、早急かつ円満に相続の手続きを完了できるでしょう。