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吉永小百合、“いのち”と向き合う コロナ禍で初の医師役 21日公開、映画「いのちの停車場」で主演

2021年5月4日 05時00分

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本紙のインタビューに答える吉永小百合(木口慎子撮影)

本紙のインタビューに答える吉永小百合(木口慎子撮影)

  • 本紙のインタビューに答える吉永小百合(木口慎子撮影)
  • 映画「いのちの停車場」で初の医師役に挑んだ吉永(右)
 女優吉永小百合(76)主演の映画「いのちの停車場」(成島出監督)が21日に公開される。感動のヒューマン医療大作で、吉永は初めて医師役に挑戦。コロナ禍で医療従事者に注目が集まるなか、運命に導かれるように医師役がめぐってきた。「生と死」が描かれた物語で、医療現場の大変さを実感。患者やその家族に寄り添い、“いのち”と向き合う作品について本紙に語った。(近藤正規)
 今作は在宅医療をテーマに、吉永演じる医師がさまざまな患者やその家族と向き合い、寄り添っていく物語。映画「朝を呼ぶ口笛」(1959年)で銀幕デビューしてから約60年。出演122本目の作品で、意外にも初めてという医師役だ。医師はおろか看護師役もなかったと言い「たぶん向いてないと思われていた。オファーがまったくなかった」と笑う。前作「最高の人生の見つけ方」(2019年)では病に冒される主婦を演じたが、過去の121作を振り返ると「病気になる役ばかり。病気で亡くなる役もあったし、病気と闘う役もあった」と語る。
 演じた医師は救命救急医から在宅医になるため「覚えることがたくさんあり、こんなに難しいとは」と苦労があったようだ。「特に手術の時の手袋がすぐに着けられなくて何度も家で練習し、本番はうまくいったがカットになっちゃった。あのフィルムだけもらいたい」とおちゃめに笑う。
 在宅医療の医師らが撮影所を訪れ、血圧の測り方や脈の取り方、患者が亡くなったときの所作、ご臨終をどのように伝えるのかなど指導を受けた。「亡くなった患者にも『ちょっと失礼します』と言って目を触るなど生きているように丁寧に扱う」など貴重なアドバイスを得て、演技に反映させた。「在宅医療は積極的に治療をするというよりはどういう形でも生きようとしている方、あるいは命を終えようとしている方にしっかり寄り添うことがとても大事なんだと分かりました。自分も親が他界するときにどういうふうにそばにいればいいんだろうと随分悩んだ。この映画をやっていれば、もう少し温かく見送ってあげられたのにと少し後悔した」
 くしくもコロナ禍でめぐってきた医師役に「演じていて責任がどんどん重くなった。医療従事者にものすごい重圧がのしかかっている中で、こういう難しいテーマで亡くなっていく方に寄り添う役をやった。精いっぱい心を込めてやったが、医療関係の方に少しでも見ていただけたら」。
 自身は幼いころ病気がちで「『肺炎っ子』と言われたんです。母によると、1歳のころ半年に2回、シリアスな病気で入院。当時、アメリカから入ってきた貴重な薬で命を救われた」と語る。「小学4年生までは毎年肺炎になって入院したこともあった。先生(医師)、看護師さんにお世話になったので、自分は『看護師になるんだ』と言っていました」と明かす。
 体が弱かった少女時代だったが、1957年にラジオドラマ「赤銅鈴之助」でデビューすると多忙になり一変。当時は小学生で「学校に行って夜はスタジオで録音。そうすると病気なんかしていられない。根性がついたのかも」と振り返る。その後、盲腸や虫垂炎になったことはあったが「後は大きな病気をしないできた。健康上はこの職業をやって良かったのかも」。
 出演作を122本まで積み上げ長く第一線で活躍してきた秘訣(ひけつ)を聞かれると「映画がすごく好きだということと、元気だったということ」。「セリフが覚えられなくなったらやめざるを得ない。いつまでやれるか分からないが、現場にいるのは幸せ。今回は(コロナ禍での撮影で)本当に大変だったが、みんなと映画を作る幸せはそれ以上のものがあった」と強調する。これからも女優として活動を続けるのか問うと「女優業というか、現場でみんなと映画を作るということができたら」とあくまでも映画女優を貫いていく。
 ◆吉永小百合(よしなが・さゆり) 1945(昭和20)年3月13日生まれ、東京都出身。57年、ラジオドラマ「赤銅鈴之助」でデビュー。59年「朝を呼ぶ口笛」で映画初出演。「キューポラのある街」(62年)でブルーリボン賞主演女優賞、「天国の駅」「おはん」(いずれも84年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など数々の受賞を誇る。62年、橋幸夫とのデュエット曲「いつでも夢を」で日本レコード大賞受賞。2006年、紫綬褒章受章。10年、文化功労者に選出。TBSラジオ「今晩は吉永小百合です」(日曜午後10時30分)でパーソナリティー。原爆詩の朗読の活動も行う。
 ◆あらすじ 東京で救命救急医として勤務していた白石咲和子(吉永)だったが、ある事件をきっかけに故郷・金沢に帰り「まほろば診療所」の在宅医となる。院長の仙川徹(西田敏行)や訪問看護師・星野麻世(広瀬すず)、さらに東京から咲和子を追いかけてきた医大卒の野呂聖二(松坂桃李)と、さまざまな事情から在宅医療を選択し、治療が困難な患者と向き合っていく。

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