【閉店】「圧倒的な天ぷらそば」で知られる立ち食いそば界の名店が復活。その意外な舞台ウラとは

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「立ち食いそば好きなら、知らなきゃモグリ」の伝説のメニュー

いきなりですが、こちらをどうぞ。

 

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もはや説明不要。

立ち食いそば好きなら知らなきゃモグリの、水道橋「とんがらし」の伝説メニュー、天ぷらもりあわせ(550円)です。

 

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そばが見えないぐらいに盛られた天ぷらは、圧巻のえび6個にいか1本になす4本。

これがなんと、浸ったツユがチリチリ音を立てるほどの揚げたてでサクサク。

下にあるのは清水製麺のゆで麺に、かえしのキュンときいた濃いめツユ。

こいつが550円で食べられちゃうわけですよ。

まさに都内の立ち食いそばで最強の、天ぷらそばなのです。

 

先代の引退で存続の危機に

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実はこの素晴らしすぎるそばが、この春に大ピンチを迎えていました。

開店してから23年、ひたすらそばを作り続けてきた先代店主の佐藤さんが引退を表明したのです。

ファンの間には動揺が広がったのですが、唯一希望だったのが居抜きでの後継者を募集していたこと。

後継者が見つかるのか見つからないのか、そば好きが集まる会などでその行く末についてしばらくヤイヤイとやっていたわけですが、めでたくも後継者が手を上げ、GW明けに以前の味そのままに再生となったのです。

 

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今回の再出発でぜひお話をうかがいたかったのですが、しばらくバタバタしていたようなので、夏も終わって落ち着き始めたこの時期の取材となったわけであります。

実は先代のときは基本、取材NGだったので、今までに一度しか取材でおじゃましていないのです。

さて、今日はどんな話が聞けるのでしょうか。

 

その味に感動して、後継を名乗り出た

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こちらが現在、店を回している樋口さん。

いつも黙々と天ぷらを揚げ続けているので、正面からお会いするのは初めてかもしれません。

実は私、もともとそば店や飲食店で働いていた方が「とんがらし」のファンで、やめるって聞いてたまらず手を上げたのでは? なんて考えていたのですが、聞いてみたらそうではなかったようで……。

 

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f:id:Meshi2_IB:20190927111328p:plain樋口さん:実は福岡にある広告代理店の社員なんです。会社が業務の多角化を打ち出してそば店の出店を模索していたんですが、ちょうどそのときに「とんがらし」が後継を探していると聞いて、思い切ってやらせてくださいとお願いしたんです。

 

なんとそば店どころか、飲食店での経験もゼロのサラリーマンだったのです。

てっきり、「蒙古タンメン中本」のようにファンが後を継いだのかと勝手に考えていたんですが、そうではなかったんですね。

 

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f:id:Meshi2_IB:20190927111328p:plain樋口さん:もともと西日本に長くいたので、そばよりもうどんをよく食べていましたし、実は「とんがらし」も後継の話が出てから初めて食べたんですよ。いやもう、感動しましたね。
天ぷらが揚げたてですごい量だし、ツユも天ぷらに合ってておいしいし。それで申し出てみたら、「ここで続けてくれるなら」と言っていただいて、後を継ぐことになったんです。

 

その後、樋口さんは勉強のために通い、先代の佐藤さんが引退する1ヵ月前から店に入って、ダシの引き方、天ぷらの揚げ方などを修行。5月のGW明けから新生「とんがらし」の店長として、店に立つことになったのです。

さて、変わらぬ味を確かめるために、このへんでもう1杯、いただきますか。

「とんがらし」と言うと、もりあわせが定番ですが、実は隠れた評判のメニューが玉ねぎ天そば(400円)なんです。

 

圧巻の「玉ねぎ天そば」は悶絶もののうまさ

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どうです? もりあわせもすごいけど、これもすごいでしょう。

ざく切りの玉ねぎは1人前で1個と、かなりのボリューム。かき揚げではなくバラ天状に揚げているので火の通りが絶妙で、玉ねぎの甘みがたっぷり。

悶絶もののうまさなのです。

 

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当然、揚げたてでホクホク。

失敗した……これに生玉子を乗せれば、もっとうまかったはずだ!

先代の佐藤さんは、「もりあわせもいいけど、春菊と玉ねぎがうちの自慢だから」と言っていたとか。確かにこの玉ねぎ天は、そんじょそこらじゃ食べられません。

ちなみにもう一つの自慢である春菊天は、売り切れで味わえず。残念!

 

具がたっぷりなのが、「とんがらしイズム」

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それにしても、もともファンの多い有名店。再オープンのときには緊張したのではないでしょうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20190927111328p:plain樋口さん:かなり緊張しましたね。飲食店をやるのは初めてだったこともあって、体がなれるのに2ヵ月ぐらいかかりました。

 

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先代が引退する直前は、名残を惜しんだ常連さんが大勢押し寄せましたが、再開後もお店はにぎわっています。

それもこれも、樋口さんがしっかりと先代の味を受け継いだからなのでしょう。

 

とはいえ、先代の味を受け継ぐだけでなく、新しい味にもチャレンジしています。

現在は従来のメニューに加え、鴨肉が10枚も乗った鴨まみれそば(680円・おにぎり付き)、島のり山芋とろろぶっかけ(冷・550円)、揚げ茄子おろしぶっかけ(冷・500円)、すじ肉まみれカレー(650円)がラインナップされています。

どれも具がたっぷりなのが、「とんがらしイズム」というところでしょうか。

 

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今回はその中からすじ肉まみれカレーをひもかわ(※幅が広めで薄いうどん)で食べてみました。

 

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トロトロに煮込まれたすじ肉がゴロンゴロン。

なんだか頭の悪い表現ですが、そうとしか言いようがないのです。

肉のうまみがスパイシーなカレーと相まって、どっしり濃いです。

でもスルスルといけちゃうのは、カレーの味に合わせて作られたツユがポイント。

天ぷらが注目される「とんがらし」ですが、ダシの香りがありつつ、やわらかなうまみを持つこのツユは出色の出来。

う~ん、しみじみうまいです。

 

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ぶっかけ2種はそろそろ終了で、これから涼しくなる時期に向けてさらなる新メニューを考えているという樋口さん。

先代の味を引き継ぎつつ、新しいことにチャレンジしていく「とんがらし」は、これからも変わらず東京屈指の立ち食いそば店であり続けることでしょう!

 

※価格は2019年9月30日現在のものです。消費税増税後に価格変更がありますので、価格については店舗でご確認ください。

 

お店情報

【閉店】とんがらし

住所:東京都千代田区神田三崎町3-2-10池本ビル1F
電話番号:03-3234-1610

twitter.com

※このお店は現在閉店しています。
飲食店の掲載情報について。

 

書いた人:本橋隆司

本橋隆司

フリーランスの編集、ライターとしてウェブや雑誌などで仕事中。近著は『東京立ち食いそばジャーニー』『立ち食いそば大図鑑』(ともにスタンダーズプレス)そばであればだいたい好き。


撮った人:安藤青太

安藤青太

カメラマン、書籍制作。グラビア系から食べ物系まで何でも撮るカメラマン。本橋とは『立ち食いそば図鑑 東京編』『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作。その他『檀蜜DVD色情遊戯2』『相撲部屋の幸せな猫たち』『東京の、すごい旅館』など。好きな立ち食いそばはコロッケそば。

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