意識改革で生まれ変わった「日本一汚い工場」 埼玉の鶴見製紙

再生紙トイレットペーパーを製造する鶴見製紙の工場=埼玉県川口市(兼松康撮影)
再生紙トイレットペーパーを製造する鶴見製紙の工場=埼玉県川口市(兼松康撮影)

再生紙トイレットペーパーの生産量で国内3位を誇る鶴見製紙(埼玉県川口市)が、創業から100年を迎えた。かつては業界内で「日本一汚い工場」、商品のトイレットペーパーは「日本一品質が悪い」と呼ばれていたが、従業員の意識改革などに取り組み、多くの見学者が訪れる企業へと生まれ変わった。

穴が開いた工場周辺の壁、ざらざらとした手触りの商品のトイレットペーパー…。平成8年に就任した里和(さとわ)永一社長(66)は、自身が入社した昭和56年頃の会社の様子を鮮明に記憶している。

「人材の成長こそが会社の成長」と語る鶴見製紙の里和永一社長=埼玉県川口市(兼松康撮影)
「人材の成長こそが会社の成長」と語る鶴見製紙の里和永一社長=埼玉県川口市(兼松康撮影)

里和社長は老朽化した建物の改修、トイレットペーパー製造用機械の更新などを進めると同時に、従業員の意識を変えるための取り組みに注力してきた。先月に出版した「100年企業のすごすぎる製紙工場」(あさ出版)で一連のノウハウなどを披露している。

試みの一つは、社内のトイレ掃除をはじめとする「環境整備」という活動だ。毎日の朝礼終了後に全員で30分間かけて清掃や業務スペースの整理整頓を行う。ささやかなことかもしれないが、従業員が同じ価値観を共有していった結果、「日本一汚い工場」という汚名の返上につながったと里和社長は振り返る。

また、手帳型の経営計画書を全従業員に携帯させて意思統一を図るとともに、現場の声を吸い上げる目的で社長と社員による飲み会を年間50~60回程度開いている。飲み会では仕事に関する話が必須だ。この試みの延長として、平成30年以降は現場の意見を反映させたボトムアップ型の経営計画書を毎年作成している。

「中小企業にとって人材の成長こそが会社の成長だ。将来のために人への投資を続けたい」と里和社長。今後は、持続可能な開発目標(SDGs)も念頭に企業活動を展開する構えで、官公庁や企業の書類を溶解してトイレットペーパーの材料として活用する循環サイクルの確立を目指している。(兼松康)

鶴見製紙 里和永一社長の祖父が大正11年8月に「里和抄紙部(しょうしぶ)」として創業した。従業員約150人。埼玉県川口市の本社と静岡県沼津市に工場を、埼玉県戸田市に物流センターをそれぞれ構える。

会員限定記事会員サービス詳細