深夜行列の天ぷら店が提訴 SNSでも誤解招くそっくり店

 深夜に大行列ができることで名をはせた「天ぷら大吉」(堺市)にソックリの看板が昨年9月、大阪・北新地の繁華街に出現した。SNS(会員制交流サイト)には系列店の登場を祝う投稿が相次いだが、実は両者は全くの無関係。本家側は看板や店名の使用差し止めを求め、後発店側を大阪地裁に提訴した。飲食業界では、看板やコンセプトをめぐるトラブルはさほど珍しくないが、模倣と「パクり」の線引きは果たして可能なのか。(土屋宏剛)

独自の伝統も

 「北新地に、あの、超有名な天ぷら大吉さんができました」「難波や堺にもある人気店!!」

 「天ぷら大吉」の系列店を経営する津本啓之さん(46)は、常連客から届いたSNSの投稿内容を見て頭が真っ白になった。

 天ぷら大吉は堺市の「堺本店」のほか、津本さんが経営する「ホワイティうめだ店」(大阪市北区)と「なんば店」(同市浪速区)の系列店2店舗がある。北新地への具体的な出店計画は存在しない。

 実際に北新地の後発店に足を運ぶと、「大阪天ぷら大吉北新地」の看板が掲げられ、メニューには本家の名物「あさり汁」も。一時期は、食べた貝の殻を床に捨てるという独自の伝統までも取り入れていたという。

 津本さんらは同11月、店舗名や看板などの使用差し止めなどを求め、後発店側を大阪地裁に提訴。津本さんは「コロナの影響で飲食店は苦しい。大吉の名前を使って客を集めようとしたのだろうか」と話す。

模倣「数えきれぬ」

 店名やメニュー、コンセプトなどをめぐり、「パクった」「パクられた」などと飲食店同士が訴訟で争ったケースは過去にもある。

 平成15年には、赤地に白抜き文字の看板の類似性などをめぐり、大手居酒屋チェーンの「魚民」と「和民」の運営会社がトラブルとなり、ついには訴訟合戦へと発展。翌16年、魚民側の看板使用を中止する義務がないことを和民側が認める内容で和解した。

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