53年の歴史に幕を下ろした「てんぷら 天公」の大塚さん=3日午後、宇都宮市池上町

53年の歴史に幕を下ろした「てんぷら 天公」の大塚さん=3日午後、宇都宮市池上町

53年の歴史に幕を下ろした「てんぷら 天公」の大塚さん=3日午後、宇都宮市池上町 53年の歴史に幕を下ろした「てんぷら 天公」の大塚さん=3日午後、宇都宮市池上町

 宇都宮市池上町の老舗天ぷら専門店「てんぷら 天公(てんこう)」が3日閉店し、53年の歴史に幕を下ろした。街なかで数少なくなった天ぷら専門店として、多くの客から愛されてきた。創業当初から使ってきたごま油の製造中止に伴い、店主大塚公一(おおつかこういち)さん(74)が「店の味は変えない」と閉店を決意。街なかの名店がまた一つ姿を消した。

 大塚さんは宇都宮商業高卒業後、東京の浅草と新橋の天ぷら専門店で修業。1968年、現在地で亡父が営んでいたそば店の裏で「天ぷら 井筒家」を開業した。74年、店を建て替えたのを機に現在の店名とした。妻君江(きみえ)さん(75)と二人三脚で店を切り盛りしてきた。

 売りは、香り高いごま油と辛めのつゆが特徴の江戸前天ぷら。特に、ごま油は、伝統技法で作られる県外メーカーの「玉締め絞りごま油」を創業時から使ってきた。今年9月、メーカーから年内で製造中止するとの知らせを受け、10月の仕入れ分がなくなった日に店を閉めることにした。

 店は長年通い続けるファンが多く、「このごま油が天公の味。違うごま油で作れば、お得意さんには味の変化が分かってしまう」と公一さん。3日にごま油を使い切り、閉店した。

 混乱を避けるため、営業中は閉店の案内や張り紙は一切しなかった。公一さんは「お得意さんにお知らせできず申し訳ない」と話す。その一方、すがすがしい表情で「平穏無事に最後の日を終え、店の味を守りました」と語った。