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初代ボンドガール、 88歳のウルスラ・アンドレスが語る出世作の裏側と骨粗鬆症のリスク

生涯キープし続けているゴージャスなブロンドのロングヘア、見事なプロポーション、そして知的で野性味のある眼差しで世界を一世風靡した俳優のウルスラ・アンドレス。1936年3月19日、スイスに生まれ育った彼女は今年88歳を迎え、自身のアイコン作品『007 ドクター・ノオ』を振り返りながら、最近尽力している骨粗鬆症啓発活動について明かした。
初代ボンドガール、 88歳のウルスラ・アンドレスが語る出世作の裏側と骨粗鬆症のリスク
ullstein bild Dtl.

「貝殻を握りしめた私は海から現れ、浜辺にいたジェームズ・ボンドにこう尋ねました。『ここで何をしているの? 貝殻を探しているの?』と。そしてボンドは私を見つめながら『いや、ただ眺めているだけだよ』と答えたあのシーンで、私は世界的なスターになりました。撮影場所はジャマイカのキングストンで、初めてボンド役のショーン・コネリーと会ったとき、私は少し緊張していたのを覚えています」

007シリーズの中でも特にアイコニックなハニー・ライダーの登場シーン。 この役で、一躍世界的スターへと上り詰めた。

Silver Screen Collection/Getty Images

2020年、スコットランドの「THE SUN」紙にこう語った俳優のウルスラ・アンドレスは、初代ボンドガールとしてあまりにも有名だ。イアン・フレミング原作/初代ジェームズ・ボンド役のショーン・コネリー共演の『007 ドクター・ノオ』(1962)のハニー・ライダー役として、前述のアイコニックなシーンで世界的な名声を得た彼女は、イタリア映画『ローマのアメリカ人』(1954)でデビュー。その後ヨーロッパで出演した作品がハリウッドの大物の目に留まり、1955 年末からアメリカに拠点を移した。そして、新天地ではいち役者に過ぎなかった彼女だったが、あの故ジェームズ・ディーンが亡くなる直前まで交際していたことで一気に注目を集め、俳優としての実力も高く評価されたことから、一躍ときの人となった。

数々の俳優と浮き名を馳せたウルスラだが、ジェームス・ディーンとの交際はひと際話題に。

Michael Ochs Archives/Getty Images

歴代ボンドガールのひとりとしてバービー人形に。衣装はやはり伝説の白いビキニ。

David Benito/Getty Images

「『007 ドクター・ノオ』は、非常に低予算の作品でしたから、あまり多くの人が観ないだろうと思って出演を決めたのです。それに、私はショーンのことを知らなかったので、これがきっと私たちにとって最初で最後の映画になるだろうと思っていました。この“期待しない”という姿勢が逆に功を奏し、興行的な成功に結びついたのだと思います」

数多のクリエイターをインスパイアし続ける“ヘアスタイル”

007シリーズ出演の裏側についてこう語ったウルスラのトレードマークは、何と言ってもボリュームのあるグラマラスなヘアスタイルだ。ときにカチューシャやヘアバンドでアクセントを効かせ、ときにハーフアップにアレンジしたそのスタイルは、現在もなお数多のクリエイターのインスピレーションソースとして、多大な影響を与えている。

ウルスラ・アンドレスのアイコニックなヘアスタイル集:

『カトマンズの男』(1965)に出演し、カンヌ映画祭へ。ギリシャのミューズのような白いドレスに合わせて白のヘアバンドでアクセントを効かせたスタイルに。

REPORTERS ASSOCIES

オールスターキャストで話題となった『007/カジノ・ロワイヤル』(1967)で同シリーズにカムバック。トップのアレンジとランダムなカールのロングヘアとのコントラストがエレガント。

Silver Screen Collection

三船敏郎も出演した『レッド・サン』(1971)。サイドとフロントを後ろにブローしただけのシンプルなヘアが、美しい顔立ちを際立たせて。

Courtesy Everett Collection

1992年スペイン・マドリッドでのポートレート。年を重ねても生涯、アイコンであるロングヘアを貫いている。

Gianni Ferrari

初代ボンドガールを襲った骨粗鬆症

2009年のカンヌ映画祭でのウルスラ・アンドレス。骨粗鬆症を医師に宣告されて間もないころ。

Jean Baptiste Lacroix

そんな彼女は、2008年86歳の時に骨粗鬆症と診断され、現在その啓発活動に従事していることで再び注目を集めている。そして、同年イギリス「デイリーメール」紙の取材に対し「私は体が思うように動かず、腰を曲げて足を引きずって歩く老人にはなりたくありません。体が動かなくなったら、私には何の意味もない。これまでのように活動できないなら、死んだほうがましです」とその心情を吐露していた彼女だが、当時はこの病のことを軽く考えていたため、医師のアドバイスをことごとく無視していたと続ける。

「医師は、私の命を守るためには薬を服用しなければならないと言いました。私は、痛みも前兆もなかったですし、やたらと薬を飲むのは嫌だったので、取り合いませんでした。ですが、これこそがこの病気の性質なのです。一見すると何の異常もなく、何も感じない。けれど、骨の中では“ガラス化”が静かに、着実に進んでいたのです」

過度の紫外線対策も発症の原因に

人間は、35歳あたりを超えると新旧の骨の代謝バランスが崩れ、自然に骨の強度が失われて弱くもろく、折れやすくなる。そして、骨を形成するカルシウムやマグネシウム不足や、カルシウムの吸収に必要なビタミンD等のバランスが取れていなかったり、適度な運動で骨に一定以上の負荷をかけない状態が続いたりすると、骨粗鬆症を発症しやすくなるのだ。

この病はまた、閉経後のエストロゲンが激減する高齢女性の発症リスクが高いと言われており、その対策として大豆に含まれるイソフラボンなど、エストロゲン様の働きをする成分を補うことが予防と改善策となっている。が、近年では太陽の光を徹底して浴びないという過度な紫外線対策も発症の原因として挙げられており、若い女性の骨粗鬆症患者も増えていることから、もはや年齢問わず骨密度検査を受けることが一番の予防策とされている。

当初は医師からの再三の警告も無視し、予防を甘く見ていたことを今では非常に後悔しているというウルスラ。そんな彼女は、現在治療に専念しながら骨折のリスクを回避する生活を送る一方、この病についての啓発活動に日々勤しんでいるという。

「骨粗鬆症とは、静かに忍び寄ってくる泥棒のようなもので、骨の健康を奪ってしまいます。そして、一度健康を損ねた骨は、元に戻ることはありません。発症してしまうと、進行具合によってはカルシウムとビタミンDの摂取だけでは足りず、適切な薬が必要になります。私は、以前医師の警告を無視した愚か者です。でも、いまは検査をしたこと、そして実際に健康や運動機能に影響が出る前に発見できたことを神に感謝します。だから、今何も異常がないからといって決して安心しないでください。検査をするだけで、その後の人生を大きく変えることができるのですから」

参考文献:
https://www.thescottishsun.co.uk/tvandshowbiz/6227011/sean-connery-james-bond-bond-girl-ursula-andress/
https://www.express.co.uk/life-style/health/1634648/ursula-andress-health-osteoporosis-diagnosis-ignored-treatment
https://www.dailymail.co.uk/health/article-1079213/My-bones-like-glass-Why-Bond-Girl-Ursula-Andress-blames-ravaged-osteoporosis.html
https://www.ctvnews.ca/ursula-andress-promoting-osteoporosis-awareness-1.379399

Text: Masami Yokoyama Editor: Rieko Kosai