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「ようやく“アジア人”以外の役をオファーされるようになった」──ミシェル・ヨーが語るハリウッドの変化

ミシェル・ヨーがアジア系俳優をめぐるハリウッドの変化を語り、オスカー受賞後にようやく“アジア人”以外の役をオファーされるようになったと明かした。
Photo: Mike Marsland/WireImage

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーが、アジア系俳優をめぐるハリウッドの変化を語った。カンヌ国際映画祭で行われた「ウーマン・イン・モーション」のトークイベントに登場した彼女は、ようやく“アジア系の風貌”と限定されない役をオファーされるようになったと明かした。

今から20年あまり前、アン・リー監督の『グリーン・デスティニー』(2000)で初めてカンヌ国際映画祭に参加したミシェルは、当時のハリウッドは明らかにアジア系俳優を受け入れる準備ができていなかったと振り返る。同作は世界中で大ヒットを記録し、第73回アカデミー賞で作品賞ほか10部門で候補入りし、外国語映画賞など4部門を受賞したものの、演技賞では出演者が誰一人としてノミネートされなかった。これはアカデミー賞に限ったことではなく、他の映画賞でも同じだ。

2000年のカンヌ国際映画祭に来場した『グリーン・デスティニー』のチャン・ツィイー、アン・リー監督、ミシェル・ヨー。

Photo: Stéphane Ruet/Getty Images

転機が訪れたのは、アジア系女性を主人公にしたロマコメ映画『クレイジー・リッチ!』(2018)の世界的な大ヒットだった。この成功がなければ今の自分はないと彼女は語る一方、エンタメ業界にはダブルスタンダードがあり、女性は男性よりセカンドチャンスをもらえる機会が少ないと訴える。

「大コケした大作映画はいくらでもあって、しかも失敗を繰り返しています。スタジオにはコンフォートゾーンがあって、その枠内にある映画は、より大金をかけ、より暴力的に、より多くのCGを使うことでよくなると考えられています。ですが、実際はそうでありません。ストーリーテリングが重要なのです。『エブエブ』ではマルチバースを行き来しましたが、メインテーマは愛情でした」。また、アメリカ人は字幕を読まないと長く言われてきたものの、その状況も変わってきたという。「『エブエブ』の成功は、多様性のある物語を描くべきだと、観客は目新しいものに興味があると証明したのです」

40年以上のキャリアを誇るミシェルだが、オスカー獲得を経て、ついに手にしたものがあるそうだ。「一番うれしかったことは、中国人あるいはアジア系の風貌の人と書かれていない役の脚本を受け取ったことです。私たちは俳優です。演技をするのです。与えられた役に入り込み、最善を尽くすのが仕事です。私にとっては、これが一番の前進でした」

ミシェルのアカデミー主演女優賞受賞はアジア系として初、非白人としても2002年のハル・ベリー以来の快挙だったが、これが彼女だけでなく大勢にとって、より良い役と出演料獲得のための道筋になればと話す。「もっとも重要なのは、アジア系俳優たちにプライドが生まれたことです。私がオスカーを獲得したとき、世界の端から喜びの雄叫びが聞こえました。こうして少しずつドアが開きました。そして私の後ろで閉じたわけではありません。アジア人の役がなかった時代は競争率が高く、誰かが獲得すると自分の人の仕事がなくなることを意味しましたが、もはや考え方を変えなくてはいけません。私が成功したら、あなたも成功できるのです」

Text: Tae Terai