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勧進帳で文楽“天ぷらうどん”デートのすすめ。(Yaka Matsumoto)

バレンタインデーは終わりましたが、この2月にこそおすすめしたい期間限定のデートプランがあります。それは、「勧進帳で、文楽“天ぷらうどん”デート」。文楽界きっての人気太夫・竹本織太夫さんも出演する最高にグルーヴィな演目に、文楽のイメージが刷新されるはず。仕事終わりの7時25分に半蔵門の国立劇場へぜひ! (しかもチケットは3,000円!)

令和2年2月文楽公演(提供:国立劇場)

土曜日に人生二度目の文楽観劇を経験しました。知人の誘いで友人たち数名と出かけたのですが、最初は眠っちゃうかも、と不安がっていた同行者たちも終演後は大興奮! ホールに出てすぐ売店でこの一冊を揃って購入する盛り上がりぶり。

誘ってくれた知人がファンを公言している竹本織太夫さんのこのご著書、なんと公演後限定で売店に並ぶのはすべてご本人直筆サイン入りでした(ビジネス本ではない、ノーマルバージョンも色違いで発売されています)。お声同様とても力強く、すてきな筆跡です。ちなみに、織太夫さんの応援団的なサポーターとして名を連ねるのは各界のビッグネームばかり:杉本博司さん、ソニア・パークさん、鈴木京香さん、岩瀬大輔さん、小泉進次郎さん& The list goes on.....。文楽は天ぷらうどん、とはこの本に記された織太夫さんの言葉。いわく、登場人物のセリフや情景描写を語り分け、物語を展開する主役のうどん(太夫)、太夫を支え、香り高くうどんと絡むだし(三味線)、舞台を華やかに彩る天ぷら(人形遣い)、その3つの技がせめぎあいながら一つになるのが文楽だから、と。

令和2年2月文楽公演(提供:国立劇場)

そんな織太夫さんが富樫を演じる「勧進帳の段」は歌舞伎でもよく知られる演目ですが、文楽初心者の私は、まず、舞台の上手にずらっと並ぶ三味線と太夫の姿に圧倒され、次に彼らが奏でるグルーヴィすぎるハーモニーに思わず脳内で拍手喝采!(本当は体を揺らしたいくらいでしたが、文楽の舞台って客席も照明が落ちきらないのです、なぜだろう?)。2月28日発売のVOGUE JAPAN4月号のテーマは「Feeling Groovy」ですが、三味線って、太夫さんの語りって、なんともいえずグルーヴィなのです。そしてこの「勧進帳」は、三味線&太夫の奏でるサウンドのグルーヴや迫力、弁慶の華やかな動き(人形遣いさんの人形さばき?)、能の舞台の松を模した潔すぎる背景美……ときめきポイントが満載で、初心者にはとても好都合な演目な気がします。通常は18時開演で1幕目、30分の休憩を経て「勧進帳の段」が始まり、21時前終演。チケットのお値段は6400円でしたが、2月文楽では、この「勧進帳の段」のみが観れてしまうお得すぎるチケット(3,000)の発売が決定したとか! 18時開始だと仕事終わりに間に合わない、という方にも好都合ですよね。公演期間は2月24日(月・祝)までです。

令和2年2月文楽公演(提供:国立劇場)

この日は、特別に織太夫さん自らが、終演後の舞台裏を案内してくださるというプライスレスツアーも急遽組まれ、ぞろぞろと楽屋裏から舞台までを見せていただけることに。このショートツアーがまた感動的でした。お写真撮るのはさすがにはばかられましたが、このカットだけ掲載をご許可いただきましたので、〆に。織太夫さんが手にお持ちの草履は、人形遣いの方々が舞台で履かれているもの。このように、自転車のタイヤが全貼りされています。複数の人形遣いさんが一体となって人形を動かすため滑りを防止するためには不可欠だそうです。そんなお話を伺うとなお一層、舞台とそれをつくりだす方々を敬う気持ちが増した夜でした。