阪神水道企業団
「Google Apps for Business は、どのグループウェア製品より付加価値が高い半面、最も低価格」と特別地方公共団体が導入。
8 年間使い慣れたグループウェアを更新

兵庫県神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市の 4 市へ水道用水を供給する阪神水道企業団は、 2008 年 4 月に既存グループウェアの更新検討を始め、 2009 年 12 月に Google Apps for Business を活用したグループウェアの導入を決定、 2010 年 2 月より利用を開始した( 3 月中旬まで旧システムと並行利用)。
それまで使用していたグループウェアは、あるグループウェアソフト会社に MS Outlook をベースにカスタマイズを依頼したもので、 2001 年にイントラネットを構築して導入された。主にメール、カレンダー(スケジュール共有管理)、掲示板が使われていた。「カスタマイズしただけあってコンパクトで使いやすく、導入から 8 年経って約 250 名の職員が使い慣れていました。しかしながら、様々な問題が重なって抜本的な更新を行う必要が生じたのです。それらはある程度予測できたので、2009 年度内の更新は以前から計画されていたものですが」と経営企画課業務改善係長の大野克彦氏は言う。様々な問題とは、主に次の 5 つである。
解決すべき 5 つの問題点
1 つ目は、カスタマイズを依頼したグループウェアソフト会社の当該事業からの撤退により、メンテナンスサービスが受けられないこと。そのため、 OS である Windows XP やブラウザなどのアップデートができないという問題があった。
2 つ目は、サーバー本体のハードウェアメーカーの保守とともに、サーバー OS のサポート期間も終了すること。
3 つ目は、システムの老朽化に伴うトラブルの発生。各種サーバーの老朽化や容量不足により、システムの停止やメールが届かないといった大きなトラブルが頻発するようになった。
4 つ目は、メンテナンスコストの増加。端末を更新、増設する際は、新しい OS ではグループウェアは稼動しないので旧式の OS にダウングレードする必要があり、それに結構な費用がかかった。また、メンテナンスコストが生じるトラブルが増加していた。
5 つ目は、セキュリティレベルおよび外部からのアクセス。スパムメール対策や強固とはいえないサーバー環境を改めること、そしていざという時のために外部からグループウェアにアクセスできるようにしておく必要性が生じていたことである。
「以前のグループウェアは外部からアクセスできませんでした。しかしながら、水道というライフラインに携わる上で、24 時間 365 日、職員が常にコミュニケーションを取れる環境を用意しておかなければならないという問題意識がありました。グループウェアを危機管理のツールにするという明確な計画はまだありませんでしたが、そのしくみは確保しておくべきと考えていたのです」
Google Apps for Business 導入事例を知り動く
以上の問題に対して、システム安定性の強化(セキュリティ対策強化、システムの最適化・冗長化)、ストレージ容量の拡大、外部アクセス対応、システム管理体制の強化といった課題を、厳しい財政下、限られた予算で解決することが求められた。大野氏らは、様々なグループウェア製品のセミナーに出掛け、デモを体験するなどして比較検討を進めた。
「検討当初は、職員が馴染んでいる Outlook ベースのシステムを最優先に検討しましたが、それで以前のグループウェアのような機能を実現させ、さらに外部アクセスを実現させるとなると、非常にコストがかさむことがわかりました。また、ほかのグループウェアには、それまで使っていなかった込み入った機能がついていました。『そんな不要な機能よりも、メール容量やスパムを解決することを優先すべき』という意見が大勢を占めたのです。かといってカスタマイズすればまた費用がかかる。さらに、以前利用していたグループウェアソフト会社のように、突然サービスをストップされてしまうリスクも感じました。」
以前から個人的に Gmail を利用していた大野氏は、早くから Google Apps についても把握していた。「当初はまだベータ版のような印象で、ビジネスに使えるのかと白眼視していたのです。ところが、ちょうどその頃、東急ハンズさんが Google Apps for Business を導入したというニュースが飛び込んできました。さっそく調べて、メール容量は 1 人 25 GBと十分なこと、カレンダーや掲示板などの機能も工夫次第で活用できそうだといったことがわかり、東急ハンズさんに導入した販売代理店の富士ソフトさんに詳細な話を聞きに行ったのです」
様々なメリットを上層部が理解
その段階で、スケジュール管理画面などの構造の違いが問題になったが、富士ソフトのコンサルテーションを受けながら以前のグループウェアに近い形に仕上げられる見通しが立った。
「そこで気持ちが固まりましたね。上層部にも Google Apps for Business の様々なメリットやクラウドコンピューティングについて理解してもらい、導入の承諾が得られました」と大野氏は述懐する。
そこで確認されたメリットは次のとおり。
Windows だけでなく、自宅で Mac を使う人もいれば、スマートフォンや電子書籍など端末も多様化していく時代。専用のソフトをインストールした端末でしかアクセスできないのでは、対応できなくなる。その点、ウェブベースの Google Apps for Business ならば、ブラウザさえあればどこからでも使える点が魅力であったこと。また将来、職員数が減少していく可能性のある状況下にあって、システム管理者の負荷も削減する必要がある。Google Apps for Business ならば、技術的なメンテナンスが一切不要であり、常に最新の機能が自動的にアップグレードされる。そして、何といってもコストパフォーマンスが非常に大きい。
「当企業団の使用レベルであれば、どのグループウェア製品より付加価値が高い半面、最低価格でした」
Google の技術や製品は唯一無二
なお、ライフラインを預かる特別地方公共団体として同企業団がデータを外部に預けるクラウドを導入できたのには、次のような要因がある。
まず、同企業団は構成 4 市に水道用水を“卸す” 事業を手がけていて、直接市民の個人情報を扱わずそうした情報がメールなどでやりとりされる可能性がないこと。また、クラウドを利用するグループウェアは、水道用水供給事業に直結する、専用線による基幹システムや業務系システムとは切り離されていること。もっとも、大野氏には次のような考えがある。「こうしたシステムを導入する際に、クラウドとオンプレミスが比較されますね。よく、重要なデータを外部に預けるリスクが俎上に載りますが、現時点では Google の技術や製品は唯一無二のものであるという印象があります。セキュリティ面では、データセンターを分散し冗長性も担保されている。ある意味当企業団のオンプレミスのシステムよりも安全かもしれません」導入前は以前のグループウェアとの操作性の違いが心配されたが、導入後に目立ったクレームなどはないという。
「Gmail については、むしろ、メールのラベル管理や、検索しやすくなったことに『前よりいいかも』という声がありました。スパムが激減していることも驚かれています」と導入にかかわった経営企画課企画調整係の加藤武彦氏は言う。同じく、業務改善係の坪田和久氏も「以前は掲示板にファイルをアップしていただけのところ、ドキュメントの中味をそのまま表示させることができ、使い勝手が向上しているところが好評」と続ける。
「今後は様々な機能を使いこなせる職員を 1 人でも増やして、企業団全体に広めていく動きを促進させていきます」と大野氏は締め括った。