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クラウドサービスなので自社サーバーは不要、それに思ったより利用料金が安かったので、これはいけると思いました。

経営企画部部長
加藤基広氏

導入製品

Google Apps for Business

会社概要

東京海上日動火災保険、東京海上日動あんしん生命保険、東京海上日動フィナンシャル生命保険など、東京海上グループ各社の情報システムの企画・設計・開発・保守・運用を手がける。 1983 年に設立され、2004 年に東京海上システム開発、日動火災システム開発、東京海上コンピュータサービスの3社が合併し、東京海上グループの IT 戦略を支える中核企業として新スタートを切った。

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東京海上日動システムズ株式会社

Google Apps for Business を活用したシェアードサービスで、グループ会社 IT の効率化とガバナンス強化を図る。

グループ会社の IT ガバナンス態勢が課題に

東京海上グループは、国内損保事業のみならず、国内生保事業、海外保険事業、金融・一般事業と幅広い事業展開を行っており、約 80 社のグループ会社を擁する。それらグループ全体の IT 戦略の中核を担っているのが東京海上日動システムズ。同社では事業の一環として、 2009 年 9 月に Google Apps for Business をベースとした、電子メールや電子掲示板など情報共有システムのグループ内シェアードサービス「TGNet(Tokiomarine Group Network)」をリリースした。

東京海上日動火災保険をはじめとするグループ中核保険会社の IT インフラは金融機関に求められる基準に則った厳重なものとなっており、高度な知識とスキルを持つ専任の IT 要員が対応するなど万全な体制を敷いている。 一方で、医療・健康・福祉といった様々な付帯サービスを手がける一般事業グループ会社の多くは、各社で独自に情報システムを構築・運営している。 これらのグループ会社では「着手した IT プロジェクトの難航・遅延」「セキュリティ対策の頻度と予算の増加」「 IT スキルを有する要員の確保・育成」といった課題を抱えていた。

「一般事業グループ会社の多くは、数名の IT 要員で情報システムを運営しており、世の中の一般的な中堅・中小企業と同じ IT の悩みを抱えています。 例えば、システムの管理運営方法などが、どうしても属人的になりやすく、 IT 要員が休職・退職してしまうとシステム運営が深刻な状況に陥ってしまう、といったことです。 当社はこれまで保険システムの開発や運用を手がけてきましたが、こうした一般事業グループ会社における IT の課題解決を支援できないだろうか、という問題意識がありました」と経営企画部部長の加藤基広氏は言う。

初期費用が大きなオンプレミスではペイしない

とはいえ、同社としても多くの要員を投入できる状況にはなかった。 2008 年秋、加藤氏らは少人数でも効果的に多くのグループ会社を支援できる方法の検討を始めたが、その過程で各社のメールシステムに着目した。 グループ各社はそれぞれ個別にめとした社内情報共有システムのグループ内シェアードサービスを構築し、同社が管理運用を行うことで各社の負荷を軽減しようと考えた。

さっそくシステム要件の検討を開始。 まず自社に専用サーバーを設置するオンプレミス方式を検討したが、専用サーバー運営に多くの要員が必要となる、初期費用がかかりすぎて数千人のユーザーを確保しないとペイしない、といった課題が判明した。

「一般事業グループ会社は様々な業種で構成されていることもあり、大半の経営判断は各社の自主性に委ねられています。 当社のサービスをグループ会社が導入するかどうかは、各グループ会社が決めるのです。 グループ内とはいえ、あくまでもビジネスとして取り組むことが前提となりますので、オンプレミス方式では難しいと考えざるを得ませんでした」と悩んでいた加藤氏だが、ちょうどその時に Google Apps の存在を知る。 「クラウドサービスなので自社サーバは不要、それに思ったより利用料金が安かったので、これはいけると思いました」と述懐する。

比較検討のため同種のクラウドサービスが他にないか調べたところ、既に複数のサービスが存在していることや、これから大手 IT ベンダーが参入する計画がある、といった情報を入手した。

Google Apps ならば低コストかつパンデミック対策も

「将来は海外のグループ会社にも展開する可能性があるので、多言語対応しているクラウドサービスに絞って選定を進めました。 その結果、某大手ベンダーが計画中のサービスと Google Apps for Business が候補に残りました。 この大手 IT ベンダーとはすでにお付き合いがあったので試験的に利用させてもらったのですが、いくつか問題がありました」

1 つはコスト。 当時、そのサービスは後発ながら利用料金が Google Apps for Business の 3 倍も高かった。 もう 1 つは、そのサービスを利用するためには PC 側にログイン用ソフトをインストールして、そのソフトに ID とパスワードを保持させる必要があったこと。 もし PC が盗難に遭った際にはセキュリティ上大きな問題となる。 さらにもう 1 つ問題があった。

「クラウドサービスならば、インターネットとブラウザさえあれば、会社の PC だけではなく自宅の PC からもアクセスできるので、パンデミック対策にも活用できると考えました。ところが、 PC へソフトをインストールすることが必須となると、利用できる PC が物理的に限定されてしまうため、パンデミック対策には使えません。それらの点も考慮して Google Apps for Business を採用することにしました」

なお、セキュリティ上 TGNet は、普段は会社の PC からしかアクセスできず、非常時にのみ自宅 PC などからのアクセスを開放する、といったコントロールを行っている。

IT 専任者がいなくても運用できるしくみに

TGNet は Google Apps for Business の他に、セキュリティ対策として Google Postini Service およびインターナショナルシステムリサーチ社の Cloud Gate を連携させている。 Postini はメールアーカイブ機能に、Cloud Gate はパスワード強度設定とアクセス制限に用いている。

「グループ各社に IT 専任者がいなくても運用できることを重視しました。 そのため TGNet ではグループ会社に管理者 ID を渡していません。 アカウントの追加・削除やパスワード再発行といった管理者作業は、全てグループ会社が当社に依頼し、その依頼は全て記録し、それによって IT ガバナンス態勢を強化する、という理由があるからです。 また、Google Apps for Business は幅広いニーズに対応するため設定パラメーターの数が多く、運営するには相応のスキルが必要ですから、IT 専任者がいないグループ会社が管理者業務を担うのは難しい、という理由もありました」

見送っていた機能を導入することができた

TGNet リリース後、半年間で 4 社が導入した(利用者は約 800 名)。 「既存メールシステムからの移行で多少は混乱が生じるだろうと覚悟していたのですが、全く混乱はありませんでした。 皆さんすぐに慣れたようです。 『メールボックス容量が大きいのでメール削除に気を配る必要がなくなった』『過去メールを素早く検索できるようになった』といった反響がすぐに返ってきました」と経営企画部の砂畑尚徳氏は言う。 それ以外にも、Google ビデオで経営トップのメッセージ動画を流したり、Google ドキュメント でアンケートを取るなど、社内の情報共有・活用促進の工夫をする会社も現れている。 各社ともメールサーバーにホスティングサービスを利用していたのでハードウェアコスト削減効果は発生しなかったものの、 IT 要員の業務は大幅に効率化されたようだ。 「それ以上に大きいのは、セキュリティレベルが格段に向上したこと」と加藤氏は言う。 「事後の追跡調査が可能なメールアーカイブなど、各社が入れたくてもスキルや予算が追いつかずに見送っていた機能を導入することができたのは大きいと思います」

同社は今後も、1 社でも多く TGNet を導入してもらうように働きかけていくという。 「当初はクラウドサービスのセキュリティを心配する声をよく聞きましたが、この 1 年で TGNet のメリットの認知度は高まったと思います。 ただし、Google Apps といえども満点ではありません。 国内の金融機関は世界的に見ても非常に厳しいセキュリティ機能を実装することが求められます。 ユーザーの要件によっては、Google Apps がクリアできていない部分が一部にあるのも事実です。 しかし、Google Apps は日々機能が改善されていますし、Google 社に我々の声を伝えていくことで、いつか国内金融機関でも問題なく使えるレベルに成長するものと期待しています」と加藤氏は力を込める。